2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年の122冊

柚木麻子『BUTTER』(新潮文庫)西條奈加『心淋し川』(集英社)柞刈湯葉『横浜駅SF』(カドカワBOOKS)ディケンズ『二都物語』(池央耿訳・光文社古典新訳文庫)柚木麻子『ナイルパーチの女子会』(文春文庫)瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社)新川帆…

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)

新人離れした新人の大作。逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』。 1942年,冬。ロシア・イワノフスカヤ村の少女セラフィマは,母とともに狩りに出ていたが――。 独ソ戦における女性狙撃手を主人公に据えた,骨太の物語である。当ブログでも紹介したスヴェト…

鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文藝春秋)

監督・落合博満についての評価が分かれることは、少しプロ野球に興味があれば誰でも知っている話だろう。8年間で4位以下に1度も落ちたことがなく、リーグ優勝4回、日本シリーズ出場5回、日本一1回。「名将」以外の表現のしようがない。 それでもなぜ落合監督…

ユゴー『死刑囚最後の日』(小倉孝誠訳・光文社古典新訳文庫)

朝起きたら,直木賞候補作発表のニュースをやっていた。 ・逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」(早川書房)・彩瀬まる「新しい星」(文藝春秋)・今村翔吾「塞王の楯」(集英社)・柚月裕子「ミカエルの鼓動」(文藝春秋)・米澤穂信「黒牢城」(KADOKA…

青山美智子『赤と青とエスキース』(PHP研究所)

おや、このあいだ、青山さん新刊出したところなのに、また出したのか・・・。 今度はどんな感じで、ほっこりできるのかな。 ・・・と軽い気持ちで読み始めたら、いつものような、ウクレレ持ったつじあやのの声が脳内BGMで流れ始める書き出しではなく、いきな…

バルザック『ゴリオ爺さん』(中村佳子訳・光文社古典新訳文庫)

雑誌「ダ・ヴィンチ」のBOOK OF THE YEARが今年も発表!本年度の小説部門1位は・・・加藤シゲアキ『オルタネート』!!ジャニーズだとか芸能人だとか,そういうのに関係なく面白かった。おめでとうございます! 加藤シゲアキ『オルタネート』と「ダ・ヴィン…

濱中淳子『「超」進学校 開成・灘の卒業生 その教育は仕事に活きるか』(ちくま新書)

今週は忙しすぎたので、読めたのは1冊だけ。というわけでその本のレビューになります、ごめんなさい。 本書は開成高校と灘高校の卒業生およそ500人ずつから回収した質問紙調査をもとに、開成・灘/一般大卒の比較や、開成と灘の比較、世代別・職業別の比較な…

伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』(朝日新聞出版)

YOASOBIと島本理生・辻村深月・宮部みゆき・森絵都とのコラボ企画が始動!4名の作家が「はじめて〇〇したときに読む物語」をテーマに小説を書き下ろし,YOASOBIがこれを楽曲にするという。これは読みたい。ぜひ読みたい。なんなら単行本の発売日に買って読…

上間陽子『海をあげる』(筑摩書房)

上間さんはずっと若年貧困(とくに女性の貧困)の問題をエスノメソドロジーによって切り取ってきた教育社会学者である。ここ数年は地元沖縄の女性の性暴力に向き合っており、話題となった本も出している。 彼女の近刊が賞を取ったということで手にしてみた。…

プルースト『失われた時を求めて 第二篇・花咲く乙女たちのかげに I・II』(高遠弘美訳・光文社古典新訳文庫)

やっと読み終えた。プルースト『失われた時を求めて』の第二篇「花咲く乙女たちのかげに」。 今回もまた,相当な時間を費やした。 プルースト『失われた時を求めて 第二篇・花咲く乙女たちのかげに I・II』 相変わらず濃密な文章が続く。様々な比喩。次々と…

グレゴリー・ケズナジャット『鴨川ランナー』(講談社)

「鴨川○○○ー」といえば、ホルモー一択だったのだが、ここに新しい選択肢が現れた。 アメリカ人の「きみ」が、高校の時に訪れた京都と日本に魅せられ、英語ネイティブ教員として丹波の町に派遣されてくる。そこで経験する日本は、高校の時に感じたキラキラし…

ダンダダン!コミック3選!

読書の秋! コミックの秋! コミック3選!最近コミック紹介をすることが多いけれど,これは決して,『失われた時を求めて』を読んでも読んでも読み終わらないためというわけでは・・・。 龍 幸伸『ダンダダン』(ジャンプコミックス) 新たな時代の作品か!…

NHKスペシャル取材班『ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』(宝島社新書)

今週いちばん衝撃を受けたのがこの本だった。 本書は2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作スタッフが、取材過程を文章化したものだ。物語は神奈川県の50代の男性の衰弱死から始まる。彼をなんとか支援しよう…

中野耕太郎『シリーズ・アメリカ合衆国史3 20世紀アメリカの夢』(岩波新書)

スターリンがソ連にいた時代,アメリカ合衆国はどうだったか。中野耕太郎『20世紀アメリカの夢』。 岩波新書「シリーズ・アメリカ合衆国史」の第3巻である。 本書が扱うのは20世紀初めから1970年代まで。格差や貧困といった新たな問題に直面したア…

砥上裕將『7.5グラムの奇跡』(講談社)

大先生が『線は、僕を描く』を激賞したのが2年前のこと。満を持して著者の第2作が刊行された。 大学を出たばかりの視覚訓練士・野宮恭一は、北見眼科医院で働き始める。彼はとにかく不器用で、採用試験に落ち続け、同級生の中で唯一就職先が決まらずにいたと…

横手慎二『スターリン 「非道の独裁者」の実像』(中公新書)

半藤一利『世界史のなかの昭和史』の内容を一言でまとめると,ヒトラーとスターリンに振り回された日本,ということになるのだろうか。『ノモンハンの夏』もそんな感じだった。 このうちヒトラーの生涯はなんとなく知っているけれど,スターリンについては断…

青山美智子『月曜日の抹茶カフェ』(宝島社)

猫は最後生き返らないから、たしかに100万回死んだんだなぁ・・・(関係ないけど)。 緊急事態宣言が明けて、ただでさえ忙しい11月にこれでもかというばかりスケジュールが詰め込まれた。スライドしてきた文化祭、体育祭、遠足、校外授業、それに保護者面談…

福井県立図書館『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(講談社)

YOASOBI with ミドリーズの「ツバメ」が今週リリースされた。Foorinの「パプリカ」のように,多くの人に愛される,息の長いヒット作になるか――。 ---さて。 普段は軽めの本は紹介しないのだけれど,でもこの本だけは例外。むしろ,すべての本好きにお薦めし…

松岡亮二編著『教育論の新常識』(中公新書ラクレ)

編著者の松岡氏は、2019年に『教育格差』(ちくま新書)によってこれでもかといわんばかりにデータの力で日本の教育をとりまく現状を切り出し、その後、さまざまな方面で格差是正のための政策提言を精力的に行っている。また、プロジェクトとして格差に焦点…

川添 愛『言語学バーリ・トゥード』(東京大学出版会)

『元彼の遺言状』が来年4月から月9でドラマ化されるとの報道があった。主演は綾瀬はるか。・・・っていうか,ドラマ化されるの早くない!? ---さて。 金水 敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』が面白かったので,他に言語学の本で面白そうなものはないか…

新川帆立『倒産続きの彼女』(宝島社)

弁護士・美馬玉子が今回扱うのは、倒産寸前の企業からの内部通報の調査である。 外国ブランドのライセンス生産が主力のゴーラム商会は、契約書の不備でライセンス契約更新に失敗し、一気に経営が傾いてしまった。ゴーラム商会には、倒産して転職しはまた倒産…

ヘミングウェイ『老人と海』(小川高義訳・光文社古典新訳文庫)

ヨルシカが8月にリリースした新曲「老人と海」。タイトルからも明らかなとおり,ヘミングウェイの『老人と海』をモチーフにした曲である。巨大なカジキマグロと命がけの格闘をする海の男――という感じはまったくなく,むしろ和やかで穏やかな雰囲気の漂う曲…

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』(新潮社)

前作から2年。くちばしの黄色かった「ぼく」は、親の預かり知らないうちに、少しずつ大人の階段を登っていた。 「ぼく」の変化とともに、イギリス社会も変化し、ブライトンの労働者階級の街も変化する。 階層間格差はますます拡大し、労働者階級の中にも目に…

プルースト『失われた時を求めて 第一篇 スワン家のほうへ I・II』(高遠弘美訳・光文社古典新訳文庫)

最近フランス文学づいてきたので,いよいよこの大作にチャレンジ。プルースト『失われた時を求めて』。 プルーストが半生をかけて執筆した大作であり,「20世紀最高の文学」とも称されている物語である。 複数の日本語訳が出ているが,読みやすさ・文体の…

江口圭一『十五年戦争小史』(ちくま学芸文庫)

先々週の続き。 ヴィオリスのルポに満足しつつ、そういえば、ちゃんとした通史を読んだことがなかったことに気づく。 それならばこれを、と勧められたのが本書であった。初版発行は1986年。昨年文庫化されて復刊。 冒頭、「十五年戦争」の定義から始まる。19…

金水 敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店)

「そうじゃ,わしが知っておる。」というセリフなら,老博士。「そうですわよ,わたくしが存じておりますわ。」というセリフなら,お嬢様。「そうあるよ,わたしが知ってるあるよ。」というセリフなら,(ニセ)中国人。 本書は,そのような「特定のキャラク…

映画「MINAMATA ーミナマター」(2020、アメリカ=イギリス)

写真家ユージン・スミスは、太平洋戦争に従軍して決定的瞬間を次々と発信し、その後、フォトジャーナリズムの新境地を開拓していた「LIFE」誌の専属カメラマンとなり、名声を手に入れた。しかし今やその影もなく、酒におぼれる毎日である。そこへ、日本へ来…

海が走るコミック4選

・たらちねジョン『海が走るエンドロール』(ボニータコミックス) うみ子,65歳。映画の世界へダイブ! たらちねジョン『海が走るエンドロール』 夫と死別し,独り暮らしのうみ子。ふと入った映画館で,映像専攻の美大生・海(かい)と衝撃的な出会いをす…

アンドレ・ヴィオリス『1932年の大日本帝国 あるフランス人記者の記録』(草思社)

アンドレ・ヴィオリスはフランスの女性ジャーナリスト。第1次世界大戦の最前線からルポを発信し、アフガニスタンや仏領インドシナにも足を運んだ。パリ講和会議を取材し、ロイド・ジョージ英首相の独占インタビューにも成功している。 彼女は上海滞在中に第1…

NATSUMI『大正浪漫』(双葉社)

小説を音楽にするユニット・YOASOBI。その新曲「大正浪漫」のリリースに合わせて発売された小説がこちら。NATSUMI『大正浪漫』。 中高一貫校に通う中学2年生の時翔(ときと)。ある日,机の上に不思議な「手紙」が置かれていて・・・。 細かいところでいろ…