光文社古典新訳文庫版・ルソー『エミール』の最終巻を読み始めたが・・・これ、とんでもないな。
ということで、今週は10か月ぶり!のコミック6選!!
熊倉献『ブランクスペース補遺』(ヒーローズコミックス ふらっと)
以前紹介した『ブランクスペース』。高校生のショーコとスイの「空白」をめぐる物語である。知る人ぞ知る、漫画界に降り立った純文学のような作品であったが、2022年発売の第3巻をもって完結した。
そうしたところ、今年になってスピンオフ短編集が発売!
どこか懐かしさのある絵柄と、すこし不思議な世界観。それぞれどこか「生きづらさ」を抱えた登場人物たちの物語は、スピンオフというにはもったいないくらい濃密である。
最終話の「#5 あの街」はカーテンコール的な作品。こういうの、いいなあ。

熊倉献『ブランクスペース 全3巻』『ブランクスペース補遺』(ヒーローズコミックス ふらっと)
(漫画)暁月あきら・(原作)青崎有吾『地雷グリコ』(ヤングアニマルコミックス)
青崎有吾の小説『地雷グリコ』はすごかった。表題作「地雷グリコ」から始まる、高校生・射守矢真兎(いもりや・まと)が挑む頭脳戦の数々。その年の本格ミステリ大賞や日本推理作家協会賞だけでなく、山本周五郎賞まで獲得し、ついには直木賞の候補作にまでなってしまった。
その『地雷グリコ』がコミカライズ。これは読まないと。
まずは神社の階段でくり広げられる「地雷グリコ」戦。ジャンケンの結果に応じて「グリコ」「チヨコレイト」「パイナツプル」の数だけ階段を上がるが、それぞれ3か所まで「地雷」を設置することができる――。
想像するしかなかった頭脳戦が、ビジュアルな形で提示されるというのは新鮮である。っていうかこの小説、本当にコミカライズに適している。
現在2巻まで刊行。それにしても、この表紙、ちょっと買いづらい・・・。

(漫画)暁月あきら・(原作)青崎有吾『地雷グリコ』(ヤングアニマルコミックス)
(原作)宮島未奈・(構成)さかなこうじ・(作画)小畠泪『成瀬は天下を取りにいく』(バンチコミックス)
コミカライズといえばこちらも見逃せない。『成瀬は天下を取りにいく』。
宮島未奈のデビュー作にして大ヒット作、そして本屋大賞受賞作のコミカライズ版である。
こちらも頭の中で想像するしかなかった世界が、ビビッドに目の前に現れる。「島崎と漫才するのは楽しかった」と言う時の成瀬の表情がすごくいい。あと、坊主頭の成瀬は結構強烈。
原作と同じく、基本的に成瀬以外の登場人物の視点で物語は進むが、最終話「ときめき江州音頭」のみ成瀬の視点で成瀬の心情が語られる(これも原作と同じ)。ああ、いい話だったな・・・と浸っていたら、何と続編の『成瀬は信じた道を行く』も2026年からコミカライズされるという。これは楽しみ。

(原作)宮島未奈・(構成)さかなこうじ・(作画)小畠泪『成瀬は天下を取りにいく』(バンチコミックス)
いしいひさいちの自費出版「ROCA」シリーズが、ついに単行本に!
ポルトガルの国民歌謡「ファド」の歌手を目指す高校生・吉川ロカと、その同級生・柴島美乃の、ちょっぴり切ない物語である。
「吉川ROCA ストーリーライブ」「花の雨が降る」「金色に光る海」からなる本作。多くは4コマや8コマの漫画で構成されるが、「金色に光る海」はめずらしく2~3頁程度の短編が中心で、結構新鮮である。
「泣ける、いしいひさいち。」とのオビの言葉に偽りはない。どれもこれも、一編の映画のようである。
学生時代、いしいひさいちばかり読んでいた時期があった。『ドーナツブックス いしいひさいち選集』を買いそろえ、繰り返し繰り返し読んでいた。本書を読んで、久々に当時を思い出した。

いしいひさいち『ROCA コンプリート』(ジブリコミックス)
三都慎司『ミナミザスーパーエボリューション』(ヤングジャンプコミックス)
ぱっとしない日常を過ごしていた高校生のミナミ。ある日、超能力が開花して――。
『新しいきみへ』で強烈な印象を残した三都慎司さんの新作である。主人公は超能力に目覚めてしまった女子高生だが、彼女自身の過去にも何だか謎がありそう。
綺麗で読みやすい絵柄は今回も健在。特に本作で鍵となる「水」の描写が美しい。まだ第1巻が出たばかりであり、ストーリーがどういう方向に進むのか、いい意味で先が読めない。いろいろ期待できそうである。

三都慎司『ミナミザスーパーエボリューション』『新しいきみへ 全6巻』(ヤングジャンプコミックス)
(漫画)石田あきら・(原作)駄犬・(キャラクター原案)toi8『誰が勇者を殺したか』(カドコミ)
最後はこちら。以前紹介したライトノベルのコミカライズである。『誰が勇者を殺したか』。
「勇者は魔王を倒した。同時に――帰らぬ人となった。」
小説の構造上、コミカライズは無理じゃないかとも思っていたが、果敢にもこれに正面からチャレンジしている。「関係者へのインタビュー」+「断章」という独自の構成もそのまま。その分、文字が多くなっているが、かえって原作の雰囲気を損ねずにビジュアル化できている。
なお、原作小説は3巻まで出た。こちらもなかなか。

(漫画)石田あきら・(原作)駄犬・(キャラクター原案)toi8『誰が勇者を殺したか』(カドコミ)
(ひ)