2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧

猪口孝『現代政治学叢書1 国家と社会』(東京大学出版会)

日本の実証主義政治学の発展は、猪口孝先生がいなければありませんでした。村松岐夫・大嶽秀夫両先生との雑誌『レヴァイアサン』刊行と、創刊号での鼎談「戦後日本の政治学」は、政治学を学んでいた自分のよりどころでもありました。現代政治学叢書は何度も…

山口未桜『禁忌の子』(東京創元社)

今年は新人作家の当たり年かも。そう思わせるミステリである。山口未桜『禁忌の子』。 市民病院で働く救急医・武田航。ある夜に運ばれて来た死体は、なんと彼とそっくりの顔をしていた――。 作者は現役の医師。本作で鮎川哲也賞を受賞してデビューしたのだが…

広中一成『傀儡政権』(角川新書)

サブタイトルは「日中戦争、対日協力政権史」。 ちょっと華北分離工作について調べることがあって、高校日本史の教科書には出てこないような小さな小さな現地政権が多数存在したことを知る。本書はそうしたあまたの現地政権の成立と変遷を、時系列を追って平…

近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

これも気になっていたので読んでみた本。近藤絢子『就職氷河期世代』。 就職氷河期世代とは、1990年代半ばから2000年代前半にかけて、バブル景気崩壊後の経済低迷期に就職した世代をいう。本書は、就職氷河期世代について、大規模な統計データを用い…

武田秀太郎『マルタ騎士団』(中央公論新社)

このあいだ、うちの学校で、著者の武田さんに講演していただいだんです。生徒放っておいて、私が感激してしまいまして・・・。 もうねぇ、かっこいいんですよ! 赤い礼服と黒い祭服があって、胸にマルタ十字の刺繍のある祭服で来られたんですけど、すっとひ…

宮島未奈『婚活マエストロ』(文藝春秋)

以前紹介した浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』。この本格的なクライム・サスペンス作品が、広瀬すず主演・松山ケンイチ共演でテレビドラマ化され、来年1月から放送されることに!キャスティングに違和感が全くない!!でもまだ連載が続いているん…

伊与原新『八月の銀の雪』(新潮社)

2021年の本屋大賞と直木賞のノミネート作品なので、このブログに出すのは今さら感もなくはないが、今週読んだ本の中でいちばんよかったということで、ごめんなさい。(ほんとうは京都文学賞の紹介をしようと思ったんですよ。でも・・・ちょっとこの文学賞、…

仁藤敦史『加耶/任那』(中公新書)

歴史の授業で出てきた「任那(みまな)」。中学・高校の授業では、教科書の記載を超えてかなり突っ込んだ解説を受けた記憶があるのだけれど、その割にフワフワして捉えどころのない存在にも感じられた。 そうしたところ、興味深い本が出たので読んでみた。仁…

渡辺裕『校歌斉唱!』(新潮選書)

職業柄、こういうタイトルの本を見ると、とりあえず手元に置いておくことが多いもので、図書館に来る外商さん経由で注文。 音楽と近代化の関係についての研究はほんとうにたくさんあり、近代学校において音楽が果たした機能についても多くの先行研究が存在す…

渡辺裕『校歌斉唱!』(新潮選書)

職業柄、こういうタイトルの本を見ると、とりあえず手元に置いておくことが多いもので、図書館に来る外商さん経由で注文。 音楽と近代化の関係についての研究はほんとうにたくさんあり、近代学校において音楽が果たした機能についても多くの先行研究が存在す…