2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

伊坂幸太郎『フーガはユーガ』(実業之日本社)

伊坂幸太郎,約1年ぶりの新作である。『フーガはユーガ』。 ちょっと不思議な双子の物語。Amazonに「あらすじは秘密」とあるので,ここでもまあ,秘密にしておきたい。 しかし伊坂幸太郎,ハズレがない。人間である以上,普通は好調・不調の波がありそうな…

ピーター・タウンゼント(中里重恭翻訳、海渡千佳監修)『ナガサキの郵便配達』(スーパーエディション)

この本は、長崎で郵便配達中に被爆したスミテル(谷口稜曄)の物語である(The Postman of Nagasaki,1984)。 物語は、スミテル少年の家族が長崎に移り住むところから始まる。戦争が始まり、1945年8月9日を迎える。スミテル少年は、背中に大やけどを負いなが…

深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)

敗戦後のベルリンを舞台に,一人の少女の生き様を描く。深緑野分『ベルリンは晴れているか』。 1945年7月,4か国統治下に置かれたベルリン。音楽家のクリストフ・ローレンツは,毒による不審な死を遂げる。アメリカ軍の兵員食堂で働く少女・アウグステ…

遠藤周作『沈黙』(新潮文庫)

10代の頃、初めて読んで、震えた。 2回目は、スコセッシの映画を観た後読み返した。 明日から修学旅行の引率で長崎~外海に行く。現地で読む3回目は、どんな感じだろう。 沈黙 (新潮文庫) 作者: 遠藤周作 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1981/10/19 メディ…

太宰治『人間失格』(新潮文庫)

・・・結局,読んでしまった。太宰治『人間失格』。 中学生の頃に読んでから,もう何年になるだろう。僕にとっては衝撃であった。当時読んだ小説の中で衝撃を受けたもの(面白かった,ではなく)を3冊選べと言われれば,間違いなく入った。以後,一度も読み…

『出たばい、ちゃんぽん本。』

中学生に、長崎での一日自由行動の計画を立てさせると、とりあえず昼食は「中華街でちゃんぽん」らしいのですけれど、別に中華街と違ってもいろいろあるのになあ、とは思います。というわけで、今週いちばん印象に残った本が、これ。 自費出版のちゃんぽん本…

塩野七生『ローマ亡き後の地中海世界 1~4』(新潮文庫)

途中まで読んだところで中断していたのだけれど,今回,ちょっと再読。最後まで読んだ。塩野七生『ローマ亡き後の地中海世界 1~4』。 西ローマ帝国滅亡後,地中海世界に台頭してきたイスラム世界と,これに対応するキリスト教世界との攻防記である。ベス…

西岡由香『愛のひと ド・ロ神父の生涯』(長崎文献社)

東シナ海に面した外海(そとめ)は、潜伏キリシタンの村であり、遠藤周作『沈黙』の舞台となったといわれる。国道沿いには「沈黙の碑」が建てられて、角力灘を見下ろす岬の上には3万点もの彼の遺品が納められた遠藤周作文学館がある。 その外海に明治の初め…