2024-01-01から1年間の記事一覧
今年は新人作家の当たり年かも。そう思わせるミステリである。山口未桜『禁忌の子』。 市民病院で働く救急医・武田航。ある夜に運ばれて来た死体は、なんと彼とそっくりの顔をしていた――。 作者は現役の医師。本作で鮎川哲也賞を受賞してデビューしたのだが…
サブタイトルは「日中戦争、対日協力政権史」。 ちょっと華北分離工作について調べることがあって、高校日本史の教科書には出てこないような小さな小さな現地政権が多数存在したことを知る。本書はそうしたあまたの現地政権の成立と変遷を、時系列を追って平…
これも気になっていたので読んでみた本。近藤絢子『就職氷河期世代』。 就職氷河期世代とは、1990年代半ばから2000年代前半にかけて、バブル景気崩壊後の経済低迷期に就職した世代をいう。本書は、就職氷河期世代について、大規模な統計データを用い…
このあいだ、うちの学校で、著者の武田さんに講演していただいだんです。生徒放っておいて、私が感激してしまいまして・・・。 もうねぇ、かっこいいんですよ! 赤い礼服と黒い祭服があって、胸にマルタ十字の刺繍のある祭服で来られたんですけど、すっとひ…
以前紹介した浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』。この本格的なクライム・サスペンス作品が、広瀬すず主演・松山ケンイチ共演でテレビドラマ化され、来年1月から放送されることに!キャスティングに違和感が全くない!!でもまだ連載が続いているん…
2021年の本屋大賞と直木賞のノミネート作品なので、このブログに出すのは今さら感もなくはないが、今週読んだ本の中でいちばんよかったということで、ごめんなさい。(ほんとうは京都文学賞の紹介をしようと思ったんですよ。でも・・・ちょっとこの文学賞、…
歴史の授業で出てきた「任那(みまな)」。中学・高校の授業では、教科書の記載を超えてかなり突っ込んだ解説を受けた記憶があるのだけれど、その割にフワフワして捉えどころのない存在にも感じられた。 そうしたところ、興味深い本が出たので読んでみた。仁…
職業柄、こういうタイトルの本を見ると、とりあえず手元に置いておくことが多いもので、図書館に来る外商さん経由で注文。 音楽と近代化の関係についての研究はほんとうにたくさんあり、近代学校において音楽が果たした機能についても多くの先行研究が存在す…
職業柄、こういうタイトルの本を見ると、とりあえず手元に置いておくことが多いもので、図書館に来る外商さん経由で注文。 音楽と近代化の関係についての研究はほんとうにたくさんあり、近代学校において音楽が果たした機能についても多くの先行研究が存在す…
美術評論家の高階秀爾さんが亡くなられた。僕にとって高階さんといえば『名画を見る眼』(岩波新書)である。学生の頃、「絵とはそういう風に鑑賞するものなのか!」と衝撃を受けた。続編の『続名画を見る眼』とともに、今でも手元に置いてある。 高階秀爾『…
「侍タイムスリッパー」めちゃくちゃよかったです~~。最初はベタなインディーズ映画かと思ったけれど、どんどん引き込まれていきました。これもまた「探偵ナイトスクープ」が引き起こした奇跡の続き・・・。 さて、本書の作者は安野貴博氏。先日の東京都知…
映画「侍タイムスリッパー」。8月にたった1館で公開されたこの自主製作映画がじわじわと動員数を上げ、ついに先週、週末観客動員数トップ10にランクイン(7位)! 快挙です! ---読み終えて数日が経過したのに、まだ余韻から抜け出せないでいる。三秋 …
たまたまテレビで見たドラマ。窪田正孝、やせたなぁ、ヴィーガンかぁ・・・などとそっちの方が気になったのだが、原作を書店で見つけて購入。 そういえば、伊与原さん、大先生はまだ取り上げてなかったっけ。 舞台は東京都立東新宿高校定時制。いろいろあっ…
執筆担当の鮎川颯とプロット担当の萩野瑛からなる作家ユニット・降田天。その最新作が話題だということで読んでみた。『少女マクベス』。 百花演劇学校の定期公演『百獣のマクベス』の幕間で、脚本・演出を担当した生徒が転落死した。翌年の春、ちょっと変わ…
南方熊楠研究者である著者が、熊楠を縦糸に、そして横糸にさまざまな在野の研究者たちを掛け合わせて織り成す、「学びと研究」の歴史である。 最初に登場するのが、ダーウィン、そしてマルクスが続く。イギリスで数多くの「在野の研究者」が活躍した背景には…
以前紹介したコミック・魚豊『チ。-地球の運動について-』。中世ヨーロッパを舞台に、禁じられた地動説を命がけで研究する者たちを描いたこの作品が、NHKでアニメ化されることに。昨日が第1回ということで、実はまだ見ていないんだけど、でもこれ、N…
第102代内閣総理大臣となった石破茂氏の著書が8月に緊急出版されたのを、遅ればせながら購入。 石破茂という名前を初めて耳にしたのは、1988年の「ユートピア政治研究会」のときである。のちに新党さきがけを結成し、政界再編を引き起こしたメンバーの中に彼…
まずは大河ドラマ「光る君へ」。彰子の出産、そして敦成親王五十日の儀が、まさに紫式部日記に描かれたとおりの姿で映像に!そして朝ドラ「虎に翼」。最後の最後まで面白かった!--- 阿部拓児『アケメネス朝ペルシア』(中公新書)で歴史学に関心が向いたと…
「虎に翼」が終わってしまいました。最終回の前日に袴田さんの無罪判決をぶつけてきた静岡地裁。法とは正義とは。自由とは平等とは。さらに今日は石破新総裁誕生、桂場のモデルとなった石田氏が立ち上げた日本会議の息のかかった党内極右を吹き飛ばした岸田…
以前紹介した川添愛『言語学バーリ・トゥード』だが、なんと続編が出た。『言語学バーリ・トゥード Round 2』。 前作に引き続き、言語学者である著者が自由奔放に語りまくる。 例えば第4章「あるあるネタはなぜ人を笑顔にしがち♪なのか」。 「~がち」とい…
準備期間から当日まで連日35度を超える酷暑の中の文化祭・・・心身共に疲れました。 まずは体の回復。そして次に心の回復。頭の回復はそのあと。というわけで、ようやく順番が回ってきた読書の時間(心の頭を同時に回復!)。 パ・リーグぶっちぎりの最下位…
映画「侍タイムスリッパー」(安田淳一監督)を見てきた。京都・太秦を舞台とする、現代にタイムスリップした侍の物語。たった1館からスタートしたにもかかわらず、この週末から全国100館以上で公開されることとなったという、奇跡のような自主製作映画…
文化祭・・・青春だなぁ。 ---デビュー作『法廷遊戯』を当ブログで紹介した五十嵐律人さん。新刊は、なんと裁判官を主人公にしたミステリとのこと。ということで早速読んでみた。『嘘か真言(まこと)か』。 志波地方裁判所の刑事部に配属された若手裁判官・…
(今日から3日間、文化祭です。まったく時間の余裕がなく、今週はパスさせてください)
古代ギリシアの歴史は、アケメネス朝ペルシアとの外交ないし戦争の歴史でもあった。そこで今度はペルシア側の歴史を知りたいと思い、読んでみた。阿部拓児『アケメネス朝ペルシア』。 副題に「史上初の世界帝国」とあるように、アジア・アフリカ・ヨーロッパ…
2028年というのは、学校での電子教科書の導入が本格化する予定の年である。学校や図書館との取引が生命線となっている街の書店にとって、残された時間は短い。 出版社、取次、書店、それぞれに問題があって、法令あるいは商慣行が問題を固定化し、解決困難な…
今年の夏はこれを読んで過ごした。塩野七生『ギリシア人の物語』。 「塩野七生・最後の歴史長編」と銘打ったこの作品。古代ギリシアの興亡を全4巻で駆け抜ける。 第1巻は「民主政のはじまり」。古代ギリシアのアテネで民主政はいかに生まれ、進展していっ…
ちょうど1年前の2023年8月31日、池袋でそごう・西武労働組合がストライキを起こしてデモ行進をした。 本書は、寺岡執行委員長が当時を振り返った記録である。 そごうと西武という2つの百貨店が、バブル崩壊を経て、生き残りをかけて苦しみながら何度も生まれ…
『死んだ山田と教室』で鮮烈なデビューをした金子玲介さん。その2作目ということで読んでみた。『死んだ石井の大群』。 白い部屋に集められた333人もの「石井」。生き残るのは、1人だけ。他方、探偵事務所を営む男のところに、人探しの依頼が――。 「教…
橋本教授は京都大学の素粒子物理学の先生。「小説すばる」にエッセイを連載中。そして本書はそれをまとめたものである。文才のある理系の先生のエッセイって、とにかく軽妙洒脱なのが多いんだよなあ。 いきなり、人間の知性というか脳のニューロンや人工知能…