橋本教授は京都大学の素粒子物理学の先生。「小説すばる」にエッセイを連載中。そして本書はそれをまとめたものである。
文才のある理系の先生のエッセイって、とにかく軽妙洒脱なのが多いんだよなあ。
いきなり、人間の知性というか脳のニューロンや人工知能の形態が、素粒子の世界と共通するので、両者を理論的に統合した「学習物理学」の話に始まり、京都の碁盤の目の街並みを日陰を通って歩く話や、雨をよけて出町柳から百万遍まで走る計算をしてみた話や、「文才のある物理学者」の大先輩・寺田寅彦に倣って満員のバスで確実に座る方法を考えたり、父の葬儀で「生きる」ことを宇宙物理学的に思索してみたり・・・。
なお、個人的に大ヒットだったのは、「市民に開かれた研究室」のためには、大学の先生が市民に講義するのではなく、動物園みたいに研究者の生態をただ観察してもらい、研究者の机に座ってもらえばいいのではないか、という提案であった(実際に研究室開放イベントには1000人の参加者があったらしい)。
それそれ、それですよ。
大学の先生の市民講座、ぶっちゃけ、もういらない。
(こ)