五十嵐律人『嘘か真言か』(文藝春秋)

文化祭・・・青春だなぁ。

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デビュー作『法廷遊戯』を当ブログで紹介した五十嵐律人さん。新刊は、なんと裁判官を主人公にしたミステリとのこと。ということで早速読んでみた。『嘘か真言(まこと)か』。

志波地方裁判所刑事部に配属された若手裁判官・日向由衣。先輩の裁判官・紀伊真言(まこと)には、ある噂があった。いわく、「被告人の嘘が見抜ける」と――。

現実の法廷の手続は様々な制約があるため、なかなかミステリの舞台にはなりづらい。本書はそれを「配属されたけれどもまだ1件も事件がない若手裁判官が、先輩裁判官の法廷を傍聴する」という設定で乗り切った。・・・いや実際にはそんなことまずないのだけれど、そこはフィクションの妙である。

全般的にコミカルな雰囲気も漂うが、そこで取り上げられている事件は、「富の再配分」などとうそぶく高齢者狙いの詐欺集団、「無戸籍」として育てられた少年、在留資格のない親から生まれた子ども等々。いずれも現代社会ならではのシリアスな問題である。本書はこれらを、ミステリという枠内で読者に提示していく。

派手などんでん返しも二重三重のトリックもないけれど、こういうミステリもあっていい。


(ひ)