準備期間から当日まで連日35度を超える酷暑の中の文化祭・・・心身共に疲れました。
まずは体の回復。そして次に心の回復。頭の回復はそのあと。
というわけで、ようやく順番が回ってきた読書の時間(心の頭を同時に回復!)。
パ・リーグぶっちぎりの最下位に沈んだ埼玉西武ライオンズには、もはやかつての常勝軍団の面影はどこにもない。それは西武王国の興亡と軌を一にする。一代でその王国を作り上げた堤康次郎という男についてはさまざまな評伝が書かれているが、辻井喬による『父の肖像』は有名である。
さて、本書は作家・辻井喬ではなく、堤康次郎の次男・清二氏へのロングインタビューにもとづいて書かれたノンフィクションである。インタビュー当時、清二氏はすでに病魔に襲われていた。そんな中、父の築き上げた王国をよそ者から守るべく、沈黙を破っていた時期でもある。死の間際まで行われたインタビューでは、父・康次郎への愛憎渦巻く感情が、詩人・小説家としての感性をまといながら、実業家としての鋭く冷徹な分析によって、吐き出される。
それにしても、康次郎という人間は、なんという恐ろしい人間だったのかと思わざるを得ない。そしてその血を受け継いだ清二という天才は、その運命に抗いながらも、父に愛された証を確認し続けようとする。
康次郎の生涯を追いながらまっさきに思い浮かんだのが、豊臣秀吉である。百姓からのたたき上げ、天性の人たらし、権力欲と金銭欲、多淫、そして愛嬌と凶暴性の同居。田中角栄が「今太閤」と呼ばれたが、彼はここまでえげつなくなかった。
一気に読んだ。どうにも胸のもやもやが収まらない。それだけ、堤康次郎と堤清二という人間が、強烈すぎたということだし、それをきちんと書き切った著者の筆の力であろう。
『決断』を読んだあと、次は西武崩壊の話にしようと本を探して、古本をネットから入手したのだが、前の持ち主がヘビースモーカーだったのだろうか、ページをめくるたびにタバコの煙のにおいがもくもくと立ち上がるのには参った。せめて葉巻かパイプだったらまだよかったのに。
ネット取引の盲点であった。
(こ)