2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

半藤一利『ノモンハンの夏』(文春文庫)

半藤一利氏が亡くなられた。 本ブログでもしばしば著書を紹介させていただいた。改めてその喪失の大きさを想いながら,代表作のうち未読のものを読むことに。以前にせんせいが記事の中で触れていた『ノモンハンの夏』。 1939年。満蒙国境でのノモンハン…

奥田英朗『コロナと潜水服』(光文社)

表題の「コロナと潜水服」をはじめとする5本の短編集。 いずれも、主人公の元に不思議な出会いがおとずれる。 湘南の古民家での少年との出会い。「追い出し部屋」でのボクシングコーチとの出会い。人気プロ野球選手とつき合うフリーアナウンサーの占い師との…

宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)

西條奈加『心淋し川』が直木賞に輝きました! おめでとうございます!また,町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』が本屋大賞ノミネート入り! さらに当ブログで紹介した本の中では,伊坂幸太郎『逆ソクラテス』もノミネート入り! 大賞発表は4月14日との…

新川帆立『元彼の遺言状』(宝島社)

腕利きの若手弁護士・剣持麗子は、奇妙な遺言にかかわることになる。森川製薬の御曹司の莫大な遺産を、自分を殺した犯人に譲るが、ただし、犯人が見つからなければすべて遺産は国庫に納める、というものだ。しかもその遺言状の作者は3か月だけつきあった元カ…

瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社)

来週はいよいよ直木賞の発表,そして本屋大賞ノミネート作の発表があります。直木賞は西條奈加『心淋し川』を推します。本屋大賞ノミネート作は・・いろいろ思い浮かぶけれど,やはり町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』でしょうか。今村翔吾『じんかん』…

柚木麻子『ナイルパーチの女子会』(文春文庫)

ナイルパーチって、こんな魚。(Wikipediaより) ↓ アフリカに住む大型の淡水魚で、大きいものは全長2m、体重200kgにもなる。肉質は淡泊な白身で食用として需要が高く、ヨーロッパや日本の食卓にも上っているそうだ。放流された川や湖では、凶暴な性…

ディケンズ『二都物語』(池央耿訳・光文社古典新訳文庫)

今度はイギリス文学を読むことに。ディケンズ『二都物語』。 フランス革命前後のロンドンとパリを舞台にした,重厚な群像劇である。 登場人物は多数に上るが,中でもバスティーユに幽閉されていたマネット医師とその娘・ルーシー,両名を見守る銀行員ロリー…

柞刈湯葉『横浜駅SF』(カドカワBOOKS)

ディストピア小説である。 冬戦争で世界が終わって数百年が経った未来の日本列島は、化石燃料が枯渇した世界で、その大部分を自己増殖を繰り返す「横浜駅」に覆われて、人々はSuikaを埋め込んで横浜駅に管理されながら、エキナカで食糧やエネルギーを与えら…

西條奈加『心淋し川』(集英社)

直木賞候補に挙げられたということで,読んでみることに。西條奈加『心(うら)淋し川』。 江戸の片隅,千駄木の一角にある「心町(うらまち)」。淀んだ川のそばにある古びた長屋を舞台にした,6作の短編からなる連作短編集である。 表題作でもある第1話…

柚木麻子『BUTTER』(新潮文庫)

あけましておめでとうございます。 大先生、本年もどうぞよろしくお願いいたします。 = 首都圏連続不審死事件の被告人・梶井真奈子が雑誌記者の町田里佳に出した条件は、マーガリンを捨て、本物のバターを食べることだった。熱ごはんにたっぷりと乗せたバタ…