瀬尾まいこ『夜明けのすべて』(水鈴社)

来週はいよいよ直木賞の発表,そして本屋大賞ノミネート作の発表があります。
直木賞西條奈加『心淋し川』を推します。本屋大賞ノミネート作は・・いろいろ思い浮かぶけれど,やはり町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』でしょうか。今村翔吾『じんかん』も良かったなあ。このあたりが入ってくれると嬉しいところです。

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さて。

こういうご時世に,少しだけ,心温まる話を。瀬尾まいこ『夜明けのすべて』。

藤沢美紗,28歳。PMS(月経前症候群)。
山添孝俊,25歳。パニック障害
心身に不調を抱える2人の,日々の物語である。

本作品のテーマは重く,また病状の描写もリアルである。それでも本作品は,読んだ人を前向きにさせてくれる「力」がある。

美紗と孝俊。話は2人の視点を交互にしながら進む。この2人の距離感が良い。恋愛感情は(おそらく)ない。2人とも普段は口数が多い方ではないのだけれど,2人の間では,ずばずばと言いたいことを言い合う。そういう関係,読んでいても楽しい。

人間,一人じゃないんだよ,必ず誰かが見てくれているんだよ。そんなメッセージが伝わる作品である。

夜明けのすべて

夜明けのすべて


(ひ)