2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

木下昌輝『宇喜多の楽土』(文藝春秋)

デビュー作『宇喜多の捨て嫁』は強烈だった。戦国の梟雄・宇喜多直家とその娘・於葉(およう)を中心に,裏切りあり,策謀ありの世界が描かれた。まるでページから狂気とか腐臭とかが沸き立ってくるようであった。 あれから4年。今度は直家の嫡男・宇喜多秀…

酒井啓子『9.11後の現代史』(講談社現代新書)

5月15日という日が、犬養首相の命日であり、葵祭で御所のあたりが一時通行止めになる日であり、 うっすらと沖縄本土復帰の日であるというあたりまでは記憶にあったが、イスラエルが独立を宣言してパレスチナ難民が生まれた「ナクバ(大惨事)の日」だとは気…

窪 美澄『じっと手を見る』(幻冬舎)

デビュー作『ふがいない僕は空を見た』は強烈だった。過激な描写,リズミカルな文体。山本周五郎賞を取り,本の雑誌ベスト10の1位に選ばれ,本屋大賞も2位に入り,果ては映画化されてトロント国際映画祭に正式出品された。その結果,・・・2作目以降も…

鷺沢萠『ウェルカム・ホーム!』(新潮文庫)

大先生オススメの『そして、バトンは渡された』を読んで、ほっこりと余韻にひたりながらふらっと入った西院駅前のブックファーストにて、「Push! 1st.」と称してブックファーストのイチオシ本を紹介するコーナーを見つける。 『そして、バトンは渡された』の…

村山由佳『風は西から』(幻冬舎)

過労自死をテーマにした小説である。村山由佳『風は西から』。 大手居酒屋チェーンに就職した健介は,若くして繁忙店の店長を任されるが,そこで待ち受けていたのは,尋常ではない業務量と,心が折れるほどの叱責だった。彼女の千秋は,そんな健介を心配しつ…

角田光代『私はあなたの記憶のなかに』(小学館)

1996年から2008年までの間に発表された8本の短編をまとめたもの。 タイムカプセルに閉じ込められた「角田光代」を掘り出して味わう作品集。 個人的感想を述べれば、最初の「父とガムと彼女」がすごくよかったので、期待して読み進めたのですが・・・「記憶」…

木皿 泉『さざなみのよる』(河出書房新社)

脚本家の夫婦ユニット・木皿泉の5年ぶりにして2作目の小説である。『さざなみのよる』。 43歳の女性・小国ナスミと,彼女の周囲の人々とを描く連作短編集である。NHKのお正月ドラマ「富士ファミリー」のスピンオフ作品なのだが,見ていなくても読める…

吉本ばなな『キッチン』(福武文庫、角川文庫)

義父が亡くなった。長くはないとは言われていたものの前の日まで元気だったのに、容態が急変して、あっという間に心臓が停止した。 夜伽で義父とワインを傾けたりしながら(寝たけど)、ひととおり葬儀も済んで、家族でファミレスに繰り出した。 無性に肉が…