2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

福井県立図書館『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(講談社)

YOASOBI with ミドリーズの「ツバメ」が今週リリースされた。Foorinの「パプリカ」のように,多くの人に愛される,息の長いヒット作になるか――。 ---さて。 普段は軽めの本は紹介しないのだけれど,でもこの本だけは例外。むしろ,すべての本好きにお薦めし…

松岡亮二編著『教育論の新常識』(中公新書ラクレ)

編著者の松岡氏は、2019年に『教育格差』(ちくま新書)によってこれでもかといわんばかりにデータの力で日本の教育をとりまく現状を切り出し、その後、さまざまな方面で格差是正のための政策提言を精力的に行っている。また、プロジェクトとして格差に焦点…

川添 愛『言語学バーリ・トゥード』(東京大学出版会)

『元彼の遺言状』が来年4月から月9でドラマ化されるとの報道があった。主演は綾瀬はるか。・・・っていうか,ドラマ化されるの早くない!? ---さて。 金水 敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』が面白かったので,他に言語学の本で面白そうなものはないか…

新川帆立『倒産続きの彼女』(宝島社)

弁護士・美馬玉子が今回扱うのは、倒産寸前の企業からの内部通報の調査である。 外国ブランドのライセンス生産が主力のゴーラム商会は、契約書の不備でライセンス契約更新に失敗し、一気に経営が傾いてしまった。ゴーラム商会には、倒産して転職しはまた倒産…

ヘミングウェイ『老人と海』(小川高義訳・光文社古典新訳文庫)

ヨルシカが8月にリリースした新曲「老人と海」。タイトルからも明らかなとおり,ヘミングウェイの『老人と海』をモチーフにした曲である。巨大なカジキマグロと命がけの格闘をする海の男――という感じはまったくなく,むしろ和やかで穏やかな雰囲気の漂う曲…

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』(新潮社)

前作から2年。くちばしの黄色かった「ぼく」は、親の預かり知らないうちに、少しずつ大人の階段を登っていた。 「ぼく」の変化とともに、イギリス社会も変化し、ブライトンの労働者階級の街も変化する。 階層間格差はますます拡大し、労働者階級の中にも目に…

プルースト『失われた時を求めて 第一篇 スワン家のほうへ I・II』(高遠弘美訳・光文社古典新訳文庫)

最近フランス文学づいてきたので,いよいよこの大作にチャレンジ。プルースト『失われた時を求めて』。 プルーストが半生をかけて執筆した大作であり,「20世紀最高の文学」とも称されている物語である。 複数の日本語訳が出ているが,読みやすさ・文体の…

江口圭一『十五年戦争小史』(ちくま学芸文庫)

先々週の続き。 ヴィオリスのルポに満足しつつ、そういえば、ちゃんとした通史を読んだことがなかったことに気づく。 それならばこれを、と勧められたのが本書であった。初版発行は1986年。昨年文庫化されて復刊。 冒頭、「十五年戦争」の定義から始まる。19…

金水 敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店)

「そうじゃ,わしが知っておる。」というセリフなら,老博士。「そうですわよ,わたくしが存じておりますわ。」というセリフなら,お嬢様。「そうあるよ,わたしが知ってるあるよ。」というセリフなら,(ニセ)中国人。 本書は,そのような「特定のキャラク…