ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』(新潮社)

 前作から2年。くちばしの黄色かった「ぼく」は、親の預かり知らないうちに、少しずつ大人の階段を登っていた。
 「ぼく」の変化とともに、イギリス社会も変化し、ブライトンの労働者階級の街も変化する。
 階層間格差はますます拡大し、労働者階級の中にも目に見える形で格差が拡大していった。日本でも出前宅配員のような請負の職種が増えてきたが、さらに先を行くイギリスでは、こうした職種に就くことを前提とするコースとカリキュラムが中学校にまで登場した。労働者の街はジェントリフィケーションが進行し、リノベーションによってこぎれいになった元公営住宅に若い中産階級の夫婦が引っ越してくる。絵に描いたようなガテン系労働者のオヤジたちは少しずつ居場所を失っていく。
 そんな中、音楽部に所属する「ぼく」は、バンド仲間と衝突してグループを脱退したり、アフリカ系のソウルクイーンの誕生に立ち会ったり、日本にやってきておじいちゃんと意気投合したり、ライブハウスに突撃の電話をかけたり、「社会を信じる」ということをレポートにまとめたり。

 11のエッセイが、さらりと喉を通っていった。
 彼女の文章のリズムが、生理的に合ってるんだな、と思った。読点の位置。「 」の場所。

 表紙は、イエローとホワイトに、ちょっとブルーを混ぜた、ライトグリーン。

 なお、同じイギリスで文筆業をしているめいろま(谷本真由美)氏は、彼女のことをSNSで酷評している。めいろまさんのところのちびろまくんと、「ぼく」をついつい比べて読んでしまった。この両者の相容れなさもまた、イギリス社会なのかなという気もする。

(こ)