フローベール『三つの物語』(谷口亜沙子訳,光文社古典新訳文庫)

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』,確かに最近よく話題になっていますね。新聞のコラム等でしばしば引用されたり,著者がテレビに出たり。さすがせんせい,先見の明ありです。

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ヴォルテールの次はフローベールを読もう,ということで,『三つの物語』。

表題どおり,3つの短編からなる短編集である。純朴な女性・フェリシテの生涯を描いた「素朴なひと」,若き聖ジュリアンの運命を描き出す「聖ジュリアン伝」,そして,いわく言い難い小説の「ヘロディアス」が収録されている。

フローベールの文体は,極限まで研ぎ澄まされている。どの小説にも,一文として無駄な文章がない。特に最後の「ヘロディアス」は,必要最小限の情報のみを少しずつ読者に提示しながら,物語を形成し,ドラマティックな展開へと導く。

この『三つの物語』は,フランスではとてもポピュラーな作品で,中学校や高校の教科書に載っていることも多いという。この作品を通じてフランスの人たちと文化を共有した感じがして,ちょっと嬉しい。

翻訳もまた,研ぎ澄まされたよい訳であった。


(ひ)