古市憲寿『百の夜は跳ねて』(新潮社)

単なる話題先行の作品だと思っていたが(ごめんなさい),書店でぱらぱらめくってみたところ,面白そうだったので読んでみた。古市憲寿『百の夜は跳ねて』。

高層ビルの窓拭きをしている「僕」。ある日,たくさんの箱の積まれた部屋の中にいる「老婆」と目が合い・・・。

思ったよりも良かった,というのが率直な感想である。ストーリーも,そして文体自身もよく練られており,読み応えがあった。窓ガラスの内側と外側。生者と死者。過去の戦争の記憶から,現在の格差社会,果てはYouTubeiPhoneウェアラブルカメラといった様々な現代のツールまでを幅広く取り入れながら,この物語は,人の「生き方」というものに,ちょっとだけ触れていく。

今回の芥川賞候補作でもある。ベテラン選考委員たちの心にどこまで響くかなあ。

芥川賞の発表は,直木賞と同じく,今週7月17日の予定である。

百の夜は跳ねて

百の夜は跳ねて


(ひ)