『和泉式部日記』(近藤みゆき訳注・角川ソフィア文庫)

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膳所から世界へ!

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さて、再び平安の沼へ。今回は「和泉式部日記」を読むことにした。
まずはお約束の「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」シリーズから川村裕子編『和泉式部日記』で頭づくり。毎度毎度、本当にお世話になっています。

川村裕子編『和泉式部日記』(角川ソフィア文庫

そしていよいよ近藤みゆき訳注『和泉式部日記』へ。

和泉式部日記は、女(和泉式部)と宮(敦道親王)との10か月にわたる恋愛模様を描いた日記文学である。

この恋愛がまた、簡単には進まない。すれ違いが生じたり、宮の心に女への疑いが湧き出たり、悪い噂が立ったりするなど、障害の連続である。途中で和泉式部石山寺に籠もったりもする。

中盤のクライマックスは、和泉式部の書いた長めの「手習い文」と、これに対する宮の返事。美しい、に尽きる。

そしてついに、宮は和泉式部を宮邸に迎え入れる・・・のだが宮邸には北の方がいる(何やってんだ)。そこで起こる騒動。最後は北の方が宮邸を去って、この日記は終わる。

さて、この「和泉式部日記」。日記文学ではあるのだけれど、和泉式部は直接知らないはずの、宮邸での宮と北の方の会話なんかも出てきたりする。そのため「日記(自作)」ではなく「物語(他作)」ではないかという見解も一部にはあるらしく、なかなか面白い。

和泉式部は後に中宮彰子に出仕し、紫式部の同僚となる。「紫式部日記」にも紫式部から見た和泉式部の評が出ている。大河ドラマ「光る君へ」でもきっと後半から登場するのだろう。誰が演じるのか、そしてどのような描かれ方をするのか、今から興味深い。

和泉式部日記』(近藤みゆき訳注・角川ソフィア文庫



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