倉本一宏編『小右記』(角川ソフィア文庫)

「あれ」って何だろう・・・あれの続編かな・・・
せんせいのレビューを楽しみにしています。

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藤原実資については「是々非々で押し通す、ちょっとクセの強い男」というイメージを勝手に抱いていた。大河ドラマ「光る君へ」では誰が演じるのだろうかと思っていたところ、なんとロバート秋山。思い切ったキャスティングで、期待が持てる。

さて、藤原実資といえば日記「小右記」である。大河ドラマに合わせるかのように「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」シリーズで出たので、読んでみることに。編者はこれまた倉本一宏先生。

全784頁。同シリーズの中では稀に見る分厚さである。

客観的事実を淡々と記していた藤原行成「権記」とは異なり、意外にも喜怒哀楽の感情がよく記されている。というかボヤキが多い。それも「何とせん、何とせん」(寛仁2年6月4日)、「嘆くべし、嘆くべし」(長元5年12月20日)など繰り返しを用いたボヤキが目につく。生の声が伝わってくるようである。

登場人物も種々に及ぶ。公家だけでなく、「去ぬる夕、女房〈越後守為時の女(むすめ)。…〉に相遭ふ。」(長和2年5月25日)として、紫式部も登場。彰子と実資とを取り次いでいたらしい。彰子の出産、そして敦成親王五十日の儀などといった「紫式部日記」で描かれていた出来事が「小右記」にも出てくる。同じ場面に居合わせたのだと思うと、ちょっと感慨深い。

道長が「この世をば・・・」と詠じたエピソードも書き留められている(寛仁2年10月16日)。道長自身の日記「御堂関白記」には記載がなく、実資が「小右記」に記したからこそ、後世に残ったという。

なお、「権記」に引き続き、解説は分かりやすく、かつ軽妙である。・・・それにしても「無能で有名な道綱」(277頁)って、ちょっとひどすぎませんか(笑)。

倉本一宏編『小右記』(角川ソフィア文庫

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