倉本一宏『藤原氏 権力中枢の一族』(中公新書)『紫式部と藤原道長』(講談社現代新書)

忌野清志郎の歌に、北朝鮮で「お~い、キム~」と呼ぶと、みんなが「なんだ~い」と答える、というのがあるのだが、平安京でもみんな藤原さんなわけで、とにかく誰が誰だかわからなくなる。系図を見るとさらにわからなくなって、天皇家系図と重ねるともうギブアップである。

そんな私が大河ドラマについていくために、時代考証の倉本先生の本で予習。
(倉本先生の『蘇我氏』は昔読んだことがあって、藤原氏がやったことは蘇我氏のパクリだと知って、それ以来蘇我氏ファンである。)

中公新書の『藤原氏』は、『蘇我氏』の続きのような形で、乙巳のクーデター以来、神事を司る中臣氏から藤原氏が分かれて天皇家の血統に絡まりながら政治の中枢を独占していく過程が、時代を追って丹念に記述される。古代の権力構造が「ミウチ」によって形成され、「ミウチ」間のパワーバランスによって権力移行が展開していくようすは、非常にダイナミックである。と同時に、権力闘争に明け暮れる貴族の世界も大変だと思う次第。

また、講談社現代新書の『紫式部藤原道長』は昨年出た本であり、紫式部藤原道長という、日本史上最高の文学者と最高の権力者が生きた時代を、一次資料のみにもとづいてふたりの人生を記述することで描き出す。道長がいなければ「源氏物語」は成立せず、「源氏物語」がなければ道長の望月のような権力はなかったという指摘は、とてもおもしろい。文中に「紫式部集」などから引用される和歌が多数掲載されているので、もっとちゃんと古典を勉強しておけばよかったな、と猛反省する。

なお、先生によれば、まひろと三郎が都大路で偶然でも出会って交流する可能性など一切ない、と、にべもない。
そうなんかなぁ(残念)

(こ)