2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「ニューノーマル」時代のコミック3選

相原瑛人『ニューノーマル』(コミックアウル) 「僕たちが生まれる少し前,ひとつの感染症が世界を変えた」 相原瑛人『ニューノーマル』 感染症の流行によって,マスクの常時着用が義務づけられた近未来の日本。家族以外の口元を見ることなどおよそない中で…

藤沢周『世阿弥最後の花』(河出書房新社)

世阿弥元清、72歳にして将軍義教の勘気に触れて、佐渡に流される。悲嘆に暮れる周囲を余所に、世阿弥は従容として佐渡への道行きを受け入れる。 佐渡では順徳院に思いを馳せ、猟師の子どもに才を見いだして小鼓を教え、見張りの武士の亡き妻が夫のためにつく…

ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』(岩波書店)

この夏の自分用課題図書。ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』。 1945年夏,敗戦――。本書は,そこから日本という国がどのように立ち上がっていったのかを,豊富な資料を引用しながら描き出した力作である。 7,8年前に上巻だけ読み終えたところで中断…

川越宗一『海神の子』(文藝春秋)

主人公は「国姓爺」鄭成功。ただし、清に滅ぼされた明を再興しようと、福建や台湾を拠点に戦い続け・・・といった「国性爺合戦」のようなスカッと爽快な英雄譚ではない。 東シナ海最大の海賊の頭領として活躍する母の松に対し、子の福松(のちの国姓爺)は、…

相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)

城塚翡翠,今度は倒叙ミステリで登場。相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』。 終盤の展開があまりにも鮮やかだった前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』。本作はその続編であり,今回はなんと倒叙ミステリ集である。当初から犯人及び犯行が明かされ,それを探偵役…

宿野かほる『ルビンの壺が割れた』(新潮文庫)

書店のポップが「大どんでん返し」を猛烈にアピールしていたので、どんなものかと買ってみた。 かつて婚約していた未帆子と一馬が、30年の時を超えてフェイスブックで再会する物語。一馬は大学の演劇サークルの代表で天才的な脚本家、未帆子は新人女優だった…

半藤一利『世界史のなかの昭和史』(平凡社ライブラリー)

半藤一利氏の「昭和」シリーズ。『昭和史』『昭和史戦後篇』『B面昭和史』と読んできて,最後残ったのがこの1冊である。『世界史のなかの昭和史』。 昭和史(主として昭和20年まで)を,世界史の視点から改めて読み解いた作品。 世界のなかの日本。世界…

辻村深月『琥珀の夏』(文藝春秋)

辻村深月という人は巫女なんじゃないかと思う。 しかし、彼女の、紡ぎ出した言葉を自在に操り人の心をえぐる能力が、本作ではどうだったか。 舞台は30年前のサマーセミナー。主人公のひとりの名前は美夏。 たしかに、夏の本、なんだけれど・・・38度の酷暑が…