2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

麻布競馬場『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』(集英社)

麻布競馬場の作品をTwitterで最初に読んだ時、衝撃が走った。1ツイート140字という制約を逆に生かして、テンポの良い言葉とキャッチーな固有名詞をちりばめながら読ませていくショートストーリー。圧倒的なリアリティと戯画的なまでのフィクションのバラ…

柳瀬博一『親父の納棺』(幻冬舎)

コロナ禍の中、著者の父が亡くなった。見舞いに行くこともできず、スマホ越しの声が最後となった。 しかし、それで終わらない。自宅に戻ってきた父を、リモート勤務をしていた息子たちが迎え入れ、5日間ともに過ごすことになった。コロナだからできなかった…

レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』(集英社新書)

軽い気持ちで読み始めたら、思いのほか深い内容だった。レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』。 「教養」っぽいものを大雑把に手早く入手し、話を合わせるツールとしてビジネスシーンで活用する。そのような大きな流れのようなものを、著者は…

新川帆立『競争の番人』(講談社)

ドラマ「競争の番人」の原作が書店に平積みされていて(それも続編と一緒に)、ああ、新川帆立さんだったのか、大忙しやなぁ、と思って手に取る。作家デビュー2年目にしての著者の「勝負作」なのだとか。主人公は公正取引委員会のガチ体育会系女性審査官・…

佐藤優『教養としてのダンテ「神曲」<地獄篇>』(青春新書)

ダンテ『神曲』を全巻通して読んだことがあったけれど、正直、結構つらかった。「地獄篇」と「煉獄篇」では主人公ダンテが「歩く」→「亡者に会う」→「話を聞く」→「歩く」を延々と繰り返す(しかも亡者のほとんどは現代人の僕らにとってなじみが薄い)。よう…

ミハイル・ゴルバチョフ『我が人生 ミハイル・ゴルバチョフ自伝』(東京堂出版)

原書が刊行されたのは2017年。日本語訳が出されたのが2022年7月、そして著者は翌8月に91歳で亡くなった。 本書は文字通りソ連最後の指導者ゴルバチョフ氏による回顧録である。北コーカサス地方の寒村に生を受けたミハイル少年が、農場で働きながら学問を修め…

次の次にくる!?コミック3選

こざき亜衣『セシルの女王』(ビッグコミックス) 『あさひなぐ』のこざき亜衣さんが次に挑むのは、なんと、16世紀イングランド! こざき亜衣『セシルの女王』 地方の地主層(ジェントリ)の息子、ウィリアム・セシル。父に連れられて登城したが、そこで君…

大井篤『統帥乱れて 北部仏印進駐事件の回想』(中公文庫)

著者は帝国海軍の海軍大佐であり、アメリカ留学経験もあるいわゆる知性派幕僚のひとりである。その著者が第二遣支艦隊参謀として南シナ海での任務に当たっていた1940年の回想である。この年の9月、近衛内閣は援蒋ルートの遮断のために北部仏印に進駐し、これ…

新海誠『小説 すずめの戸締まり』(角川文庫)

先日発表された「次にくるマンガ大賞2022」。コミックス部門1位に選ばれたのは、つるまいかだ『メダリスト』でした! おめでとうございます!!第1巻からこつこつと読み進めていたファンとしては嬉しい!まだまだ粗削りなんだけど、熱量だけはどのマン…

野崎昭弘『詭弁論理学』(中公新書)

前半は「強弁」と「詭弁」について。後半では三段論法やパラドックスなどに踏み込む。練習問題もついていて、ほんとうにわかりやすい。 本書が書かれたのが1976年、著者40歳のときである。2017年に改版が出され、早くも5刷。 本書が興味深いのが、半世紀前に…