ミハイル・ゴルバチョフ『我が人生 ミハイル・ゴルバチョフ自伝』(東京堂出版)

 原書が刊行されたのは2017年。日本語訳が出されたのが2022年7月、そして著者は翌8月に91歳で亡くなった。
 本書は文字通りソ連最後の指導者ゴルバチョフ氏による回顧録である。北コーカサス地方の寒村に生を受けたミハイル少年が、農場で働きながら学問を修め、モスクワに出て大学で生涯の伴侶・ライサと出会う。共産党に入り、権力闘争を生き残り、相次ぐトップの死によって50代で書記長に就任する。途中、1987年に出された『ペレストロイカと新思考』が挿入され、その後は政治的混乱の中での民主化と体制改革、その結果としての1991年8月のクーデターと12月のソ連邦消滅。後半はエリツィン時代を経てプーチン時代についての評論が続く。エリツィンに対する評価は手厳しい。執筆当時のウクライナとクリミアを巡る問題については、著者はウクライナ国内の政治問題に加えて西側諸国の対応を批判し、このままでは済まないということを予言するような調子ですらある。

 ゴルバチョフは徳川最後の将軍慶喜であり、エリツィン薩長といったところか。手段を選ばずに権力を奪取し、仲間の政商に国家財産を下げ渡して支持を受け自らの権力を強化したところもまた、明治政府と同じだ。とすると、プーチンにあたるものは何か?

 読み応えのある1冊であった。
 なお、ウィキペディアに最近、ゴルバチョフ平和財団は統一教会が出資したものだ、という一文が付け加えられた。少し注意が必要かもしれない。

 

(こ)