野崎昭弘『詭弁論理学』(中公新書)

 前半は「強弁」と「詭弁」について。後半では三段論法やパラドックスなどに踏み込む。練習問題もついていて、ほんとうにわかりやすい。

 本書が書かれたのが1976年、著者40歳のときである。2017年に改版が出され、早くも5刷。
 本書が興味深いのが、半世紀前には「強弁」「詭弁」として、そんな恥ずかしいことよく口に出しますね、という雰囲気を言外にほのめかされるような事象が、今やあちこちで散見されるようになってしまった、ということである。著者は「小児病」という表現まで使い、大の大人が言うことではないと手厳しい。
 しかし残念ながら、成熟したはずの大人たちが、SNSで、YouTubeで、そして挙げ句の果てには時の総理が国会での答弁に立って、堂々と開き直るようになったということを、著者はどうお考えなのだろう。
 いまだご存命。改版にあたって一筆添えていただきたかった。

(こ)