軽い気持ちで読み始めたら、思いのほか深い内容だった。レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』。
「教養」っぽいものを大雑把に手早く入手し、話を合わせるツールとしてビジネスシーンで活用する。そのような大きな流れのようなものを、著者は「ファスト教養」と名づけ、分析していく。
目上の人に気に入られるために古典文学を読む。名著の内容はYouTubeでチェック。お金につながらない勉強は、無駄――。
著者によると、このようなファスト教養の背景には、「成功への欲望」と「使えないという烙印を押さえることへの恐怖」があるという。不安な時代だからこそ、ファスト教養というものにとらわれ、からめ捕られていく。
第3章「自己責任の台頭が教養を変えた」が秀逸。ファスト教養が一定の支持を得るに至った経緯について、ここ20年くらいの歴史を紐解く。影響力を持った様々な有名人が何を発信してきたかについてを丹念に追う。
ここ数年感じていた、なんだかモヤモヤしていた空気感みたいなものにうまく焦点が当てられた論稿である。と同時に、そういうファスト教養を求める気持ちというのもよく分かる。自己責任とか実力主義とか言われたりして、そりゃ不安になるもんね。
「おわりに」に出てきたSMAPの「Joy!!」の歌詞が良かった。SMAPは、偉大だった。
(ひ)