こざき亜衣『セシルの女王』(ビッグコミックス)
『あさひなぐ』のこざき亜衣さんが次に挑むのは、なんと、16世紀イングランド!
地方の地主層(ジェントリ)の息子、ウィリアム・セシル。父に連れられて登城したが、そこで君臨していたのは暴君ヘンリー8世だった。やがてウィリアムは妊娠中の王妃アン・ブーリンと出会い、未来の「王」に仕えることを誓うが――。
エリザベス1世を終生にわたって補佐したウィリアム・セシルの目を通して、当時のイングランドを描く歴史絵巻である。権謀術数渦巻く宮廷の中で、若きウィリアムはどこまでも真っすぐである。
第1巻のラストでエリザベスが誕生し、第2巻ではその幼少期が描かれるが・・・日本のマンガ史上、ここまで貫禄のある赤ちゃん(しかも女の子)が果たして存在したであろうか!? 想像のはるか上を行く描写に思わず笑みがこぼれる。
物語はまだまだ始まったばかり。今後の進展がとても楽しみな作品である。
森永まさと『湘南らーめんガール』(チャンピオンREDコミックス)
茅ヶ崎在住のホーコ。信州・松本から藤沢に引っ越してきたヒトミ。鎌倉在住のミィナも途中から加わって、3人の女子高生が湘南のラーメンを食べ歩く!
「おしゃべり」と「街歩き」と「ラーメン」のバランスが絶妙。他愛ないおしゃべりと、湘南の地の様々な街歩き。そして本作のメインテーマであるラーメンは、いずれも実在の店をモデルにしている(名前は少しだけ変えてあるけれど)。
第1話でホーコとヒトミが出会う場所が、鶴岡八幡宮や鎌倉大仏といったメジャーどころではなく、「寒川神社」なのが地元密着感があってすごく良い。他にも見覚えのある景色が次々と出てくる。まさに湘南の地にどっしりと根を張ったマンガである。
読むだけでハッピーになれるマンガである。時間があれば、モデルとなった店を回ってみたい。
〔原作〕左藤真通・〔作画〕富士屋カツヒト・〔監修〕清水陽平『しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~』(ヤングアニマルコミックス)
「ネット炎上・SNSトラブルに遭ったことはありますか?」
弁護士の仕事は多岐にわたる。本作は、その中でもネット上の誹謗中傷トラブルを取り上げた作品である。
全般を通してコミカルな描写も少なくないが、そこで描かれているのは発信者情報開示請求のリアルな現場。ネット上で悪質な書き込みの被害にあった被害者は、どのような手段を取れるのか。また、書き込みをした本人は、その後どうなるのか。本作は、コミックというエンタメ作品でありながらも、現代のネット社会における必要な「知識」を読み手に提供する。
監修は清水陽平弁護士。この分野で知らない人はいない、第一人者(の一人)である。それゆえ法的な描写は(少なくとも根本部分は)極めて正確。・・・これ、ネットを使う人たちに幅広く読んでもらった方が良いと思う。いや本当に。
(ひ)