2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

加藤シゲアキ『チュベローズで待ってる』(扶桑社)

これはもはや,ジャニーズのアイドルが書いたタレント本ではない。プロの作家が描いた立派なエンターテインメント小説である。加藤シゲアキ『チュベローズで待ってる』。 上下巻からなる作品である。上巻の『AGE 22』では主人公は22歳。就職活動に失敗した…

安彦良和『イエス JESUS』(NHK出版)

20年ほど前だったか、春休みに、シリアからヨルダンを経て、イスラエルに向かったことがあった。ちょうどイスラム教の「犠牲祭」(神に試されたアブラハムが息子を捧げようとしたことを記念するお祭り)だったので、あちこちで羊を屠って盛り上がっているよ…

遠田潤子『オブリヴィオン』(光文社)

「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」堂々の第1位である。遠田潤子『オブリヴィオン』。 絶望と,後悔と,そこから這い上がろうとするほんの少しの希望の物語である。 冒頭から読ませる。刑務所から出所してきた主人公・森二(しんじ)。これを待ち構…

日本自立生活センター(JCIL)企画編集『障害者運動のバトンをつなぐ』生活書院

観てきました、「グレイテスト・ショーマン」! いや~~~~ よかったっっっ!! というか、ヒュー・ジャックマン。あなたこそが最高のショウマンですよ! ・・・すみません、読書日記にもかかわらず、あまりにいい映画を観たもので、興奮してしまいました。…

司馬遷『史記 1~8』(徳間文庫カレッジ)

ついに,ついに読破した。徳間版『史記』全8巻。 抄訳ではある。抄訳ではあるが,各巻500頁前後で全8巻というのはかなりのボリュームであるし,しかも主な出来事やそこそこ有名なエピソードはほぼ網羅している。何よりもまず,簡単な解説と現代語訳に加…

岡潔・小林秀雄『人間の建設』(新潮文庫)

畑違いのふたりによる対談というのは異種格闘技のようなものでもある。 この、戦後日本を代表する数学界と批評界の二人の碩学による対談は、昭和40年、新潮の企画で行われたらしい。 二人は自己主張に走らず、対話のための糸口をさぐり、互いにパスを出し続…

赤神諒『大友二階崩れ』(日本経済新聞出版社)

華々しいデビュー作です。赤神諒『大友二階崩れ』。 九州の戦国大名・大友氏内部のお家騒動「二階崩れの変」を題材に,家臣の吉弘左近鑑理(あきただ)とその弟・右近鑑広(あきひろ)を描いた歴史小説です。 これが,並の戦国小説とは違う。「義」を貫こう…

森見登美彦『新釈 走れメロス』(祥伝社文庫・角川文庫)

大先生のマキャベリに触発されて、塩野七生の『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』が無性によみたくなった(こ)です、こんにちは。今回は前回の続きで、現地で読むといいよねシリーズにしようかと。 京都を舞台にした小説はたくさんあるけれど、や…

和田竜『村上海賊の娘 1~4』(新潮文庫)

ごめんなさい。こんなに破天荒でハチャメチャで面白い戦国時代小説,今の今まで読んでいませんでした。和田竜『村上海賊の娘』です。 村上水軍の娘・景(きょう)を主人公に据え,大阪湾で実際に行われた海戦「木津川口での戦い」を描いた小説です。これが,…

有川浩『阪急電車』(幻冬舎)

うちのクラスの学級文庫に何冊か持って行こうと、自宅の本棚をごそごそまさぐっていたところ、ぽろりと頭の上に降ってきたのが、なつかしい『阪急電車』だった。 最初に買って読んだのは、どうやらもう10年も前のことになるらしい。 久しぶりに手にとって、…