2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

小西マサテル『名探偵じゃなくても』(宝島社)

梶川卓郎『信長のシェフ』が、ついに完結した。振り返ってみると、10年以上にわたって読み続けていたことになる。現代の料理人が戦国時代にタイムスリップするというこの物語。戦国武将らを初めとする登場人物のいずれもが魅力的であった。特に信長の描写…

朝比奈なを『進路格差 <つまづく生徒>の困難と支援に向き合う』(朝日新書)

職業柄、教育関係の書籍や論考を読む機会はやはり多い。 正直言えば、教育ジャーナリストとしていろいろな人が本を出したり記事を書いたりしているが、エビデンスに乏しかったり、流行に飛びついただけだったり、出羽守のできそこないだったり、ただ煽ってい…

青崎有吾『地雷グリコ』(角川書店)

思いっきりエンタメに振り切った小説が読みたい。そう思って選んだのがこちら。青崎有吾『地雷グリコ』。 女子高校生の射守矢真兎(いもりや・まと)。文化祭で屋上スペースの割当てを受けるため、ある勝負に出ることに。名づけて「地雷グリコ」――。 ジャン…

矢口祐人『なぜ東大は男だらけなのか』(集英社新書)

『創造の方法学』という古典的名著があって、その中に、問いの立て方についての章がある。問いは「なぜ」でなければならない、というのだ。 もっとも、すべての研究上の問いを「なぜ」にするのは酷だとは思うし、かといって、チコちゃんのように、何でもかん…

萩原 淳『平沼騏一郎』(中公新書)

昭和初期の疑獄事件として「帝人事件」というのがある。帝人株をめぐる贈収賄事件として合計16人が起訴され、斎藤実内閣の総辞職の契機となったが、結局、全員が無罪とされた。検察の強引な取り調べは、後に「司法ファッショ」「検察ファッショ」などとし…

浅倉秋成『家族解散まで千キロメートル』(角川書店)

主人公は周(29)、八王子市の公務員。警察官の彼女と婚約し、山梨県の実家を出ることになった。姉のあすなも結婚することになり、実家を解体することになったので、すでに家を出ていた兄の惣太郎も夫婦で手伝いにやってきた。父は「あの事件」以来、家には…

山本文彦『神聖ローマ帝国』(中公新書)

宮下英樹『神聖ローマ帝国 三十年戦争』を読んで神聖ローマ帝国に興味を持ったのだが、なかなか手頃な本が見つからない。どうしたものかと思っていたところ、この4月に格好の本が出版された。山本文彦『神聖ローマ帝国』。 オットー1世の戴冠から850年…

藪下遊/髙坂康雅『「叱らない」が子どもを苦しめる』(ちくまプリマー新書)

働いていると本が読めないことの理由と対策はわかった気がしても、現実問題として、読めないものは読めないのであります。 今、学校現場では、不登校の生徒に対しては、登校刺激を与えず、ゆっくりと休ませることが大切だとされている。たしかにそれはそう思…