一穂ミチ『ツミデミック』(光文社)

快晴のエスコンフィールド! 大型ビジョンのウエルカムメッセージ!
そして幹部の方のご講演!!
せんせいの行動力にびっくりです。生徒さんたちがうらやましい。

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先週に引き続き、こちらも直木賞候補作。一穂ミチ『ツミデミック』。

パンデミック×犯罪」をテーマとした、全6話からなる短編集である。

軽い気持ちで読み始めたが、第1話「違う羽の鳥」から見事にハマった。夜の街で客引きをしている優斗のところに、女性が声を掛けてくるのだが――。どこまでが真実で、どこからが真実でないのか。「虚」と「実」の間のふわふわした感触が心地よい。思わず二度読みした。

続く第2話「ロマンス☆」も秀逸。フードデリバリーサービスの配達員とすれ違った百合(ゆり)は、その後――。話は思わぬ方向へ進む。

その後も第3話「憐光」、第4話「特別縁故者」、第5話「祝福の歌」と、個性豊かな話が進む。最終話「さざなみドライブ」は、まさにこの短編集の最後を飾るにふさわしい。

どの話も多かれ少なかれ「家族」像が出てくる。しかも大抵は機能不全に陥った家族像というのが、一穂ミチさんらしい。それでいて決して重たくなりすぎない。そのバランスが絶妙である。

これほど面白い話のそろった短編集というのはなかなかない。これはひょっとして・・・直木賞・・・行くかもね。

一穂ミチ『ツミデミック』(光文社)


(ひ)