これまで紹介した本の数は約500冊。ここまでくると、もはやダブらない方が奇跡かも・・・(笑)。
---
第167回直木賞候補作発表!・・・なのだが、今回は読んだ作品が1作もない。今年の上半期は、吾妻鏡ばかり読んでいたせいかも。
このまま祭りに乗り遅れるのも何なので、窪美澄さんの候補作を読むことに。『夜に星を放つ』。5つの作品からなる短編集である。
1作目「真夜中のアボカド」から秀逸。コロナ禍の下での日常生活を描いた小説は既にいくつも出ているが、本作はその距離感が良い。何てことはない出来事なのだけど、しっかりと読み手の心を刻む。
2作目「銀紙色のアンタレス」は、主人公の「僕」の心理描写が良い。デビュー作もそうだったけれど、窪さんはこういうティーンエイジャーの心をうまく汲み取る。
ちょっと変化球気味の3作目「真珠星スピカ」、モヤモヤ感の残る4作目「湿りの海」を経て、最終話「星の随に」は少し切ない喪失の物語。・・・というか、振り返ってみると、5作とも何かしら喪失と欠落のからんだ物語だったりする。
1作1作の短編を、しっとりと読ませ、かつ心を揺さぶる。
近年の直木賞は長編(しかも大作)か、短編集であっても舞台や登場人物を共通にする連作短編集が多く、本作のような純粋な短編集だとなかなかハードルが高いところ。個人的にはもうそろそろ直木賞を取っても・・・と期待してしまうキャリアなのだが、さて、どうなりますか。
(ひ)