一穂ミチ『光のとこにいてね』(文藝春秋)

第168回直木賞・候補作が先日発表されました。

一穂ミチ『光のとこにいてね』(文藝春秋
・小川哲『地図と拳』(集英社
雫井脩介『クロコダイル・ティアーズ』(文藝春秋
千早茜『しろがねの葉』(新潮社)
・凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社

凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』が予想どおり初ノミネート!
先日「どれも分厚い」と紹介したばかりの小川哲さんは、やっぱり分厚い作品で2回目ノミネートです!
そして、以前『スモールワールズ』を激推ししていた一穂ミチさんも、11月発売の新刊がノミネートされました。

・・・というわけで、早速読んでみた。一穂ミチ『光のとこにいてね』。

古びた団地の片隅で偶然出会った少女の結珠(ゆず)と果遠(かのん)。異なる境遇に生まれ育った2人は、やがて――。

結珠と果遠の視点が交互に入れ替わる。全3章からなる小説であり、このうち第1章「羽のところ」と第2章「雨のところ」は、言ってみれば少々長いプロローグ。第3章「光のところ」が、本作の中核をなす。

それぞれが母親との母娘関係にもがき苦しみながらも、結珠は果遠を、果遠は結珠をそれぞれ求め、そしてすれ違う。本作のストーリーを事細かに語るのは野暮というものであろう。読書中は、甘いバター入りココアが飲みたくなる。

最後の最後まで先が読めない展開で、しっかりと読ませた。この作品、選考委員の方々はどう受け止めるか。

一穂ミチ『光のとこにいてね』(文藝春秋


(ひ)