半藤一利編著『十二月八日と八月十五日』(文春文庫)

 年の瀬の「徹子の部屋」で、「新しい戦前」というパワーワードがタモさん(1945年8月生まれ)の口から飛び出したそうだ。戦後78年目。明治国家とちょうど同じ歳月を重ねたことになる。近代日本の3ターン目は、どうやって幕を開け、どこへ向かうのか。

 というわけで、今年の最後は、半藤一利氏で終わりたい。半藤翁が健在であれば、今年を振り返って何と言われたことか。

 

 12月8日のことは『[真珠湾]の日』で、8月15日のことは『日本のいちばん長い日』で書き切った半藤氏が、この2つの運命の日を、朝から夜まで、時系列を追って書き連ねていった、戦後70周年に出された文庫オリジナル。
 その日を、そのときを、吉本隆明は、阿川弘之は、中根千枝は、中村吉右衛門は、日火野葦平は、木戸幸一は、松岡洋右は、草野心平は、加藤周一は、高村光太郎は、谷崎潤一郎は、山本周五郎は、峠三吉は、芦田均は、徳川夢声は・・・どこで、何をしながら迎え、何を思ったのか。

 私たちは今年、ロシアがウクライナに侵攻し、安倍元首相が撃たれ、戦後が音を立てて崩れていく現場に居合わせた。2022年という年は、後世どのように語られるのだろう。

 

 半藤氏の言葉である。

「わたくしも日本と日本人を愛している。この美しい国土を愛している。であるから、いっそう強く思う。この敗戦直後の声に、日本人はもういっぺん耳を傾けなければならないのではないか。
 日本人よ、いつまでも平和で、穏やかで、謙虚な民族であれ。」

(こ)