矢樹純『不知火判事の比類なき被告人質問』(双葉社)

第168回直木賞は小川哲さんの『地図と拳』と、千早茜さんの『しろがねの葉』に決まりました! ・・・それにしてもあんな分厚い本、よく獲ったな~。

そして同じく今週発表された本屋大賞ノミネート作品10作! 当ブログで紹介した中からは、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』、一穂ミチさんの『光のとこにいてね』、それから小川哲さんの『君のクイズ』がノミネート入りしました。小川哲さん、直木賞とは別の作品でノミネート入りです。すごい。

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竹野内豊が月9ドラマ「イチケイのカラス」で裁判官を演じたと思ったら、次は北川景子が同じく月9ドラマ「女神の教室」で裁判官を演じている。そして「イチケイのカラス」の方は映画が上映。一体どうなってんの?と思っていたところ、こんなミステリを発見。矢樹純『不知火判事の比類なき被告人質問』。

横浜地方裁判所の裁判官・不知火(しらぬい)春希。検察側・弁護側が激しく争う法廷で、彼の放った一言が、法廷の空気を大きく変える。真実は――。

5つの作品からなる連作短編集である。

「私」こと裁判傍聴ルポライター・湯川和花が関係者にインタビューし、裁判を傍聴し、いよいよ隠された真実が明らかになる、と思われたところで不知火判事が「比類なき被告人質問」を行い、それまで見えていた景色が一変する・・・というのがこの作品のフォーマットである。

ミステリとしてはいわゆる「安楽椅子探偵」物に分類されるのであろう。探偵が現場に直接赴くことなく、関係者からの話だけで推理をする。もっとも本作は、主人公が裁判官であり、裁判官は法廷で接した情報のみで推理をし、推理は被告人質問という形で披露されるなどといった点で、まさに他に類を見ない作品となっている。

描写される裁判手続には多少のツッコミどころもあるものの、読み進めるにつれてだんだん気にならなくなってきた。いろいろチャレンジングな作品でもある。続編、希望。

矢樹純『不知火判事の比類なき被告人質問』(双葉社


(ひ)