2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

シェイクスピア『夏の夜の夢・あらし』(福田恆存訳,新潮文庫)

森見登美彦のインタビュー記事を読んだ。『熱帯』のベースとなった先行作品として,「千一夜物語」や「ロビンソン・クルーソー」とともに,シェイクスピア「テンペスト(あらし)」を挙げていた。テンペスト? う~ん,実は読んだことがない。どう関係してく…

山野辺太郎『いつか深い穴に落ちるまで』(河出書房新社)

主人公・鈴木は山梨県のとある建設現場にいる。リニア実験線の横で、表向きは温泉を掘っているのだが、実は極秘プロジェクト・・・ブラジルまで深い深い穴を掘ってつなげようというもので、終戦後まもなく運輸省の官僚・山本が新橋の闇市で思いついた案ある…

平野啓一郎『ある男』(文藝春秋)

今年度下半期の直木賞候補作が,以下のとおり発表されました。 ・今村翔吾『童の神』(角川春樹事務所)・垣根涼介『信長の原理』(KADOKAWA)・真藤順丈『宝島』(講談社)・深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)・森見登美彦『熱帯』(…

天野純希『雑賀のいくさ姫』(講談社)

雑賀孫一の娘・鶴は、難破した三本柱の南蛮商船を手に入れると、結婚を迫る父と許嫁の左近から逃れ、合戦によってではなく貿易商人として生きるために海に乗り出す。船には、スペイン貴族の末裔でサムライを求めて日本にやってきたジョアン、剣の達人二階堂…

佐藤友哉『転生!太宰治 転生して、すみません』(星海社FICTIONS)

島本理生『ファーストラヴ』が今年度上半期の直木賞を受賞して5か月。下半期の直木賞ノミネート作の発表が,いよいよ来週17日(月)に迫ってまいりました。 僕がこの半年に読んだ作品の中では, ・森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)・塩田武士『歪んだ波紋…

保阪正康『昭和の怪物 七つの謎』(講談社現代新書)

昭和史研究の第一人者、保阪正康氏が、膨大なインタビュー記録の中から選りすぐった証言を軸に、昭和史の重大局面を描き出したもの。赤松貞雄(東條英機秘書官)、高木清寿(石原莞爾側近)、犬養道子(犬養毅の孫)、渡辺和子(渡辺錠太郎の娘)、瀬島龍三…

森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)

以前この欄で紹介した深緑野分『ベルリンは晴れているか』ですが,なんと,今年度の「このミステリーがすごい!」の2位,「週刊文春ミステリーベスト10」の3位に入りました! 決してメジャーな作品ではないにもかかわらずこの順位! いや~,うれしい。 …

野村正實『雇用不安』(岩波新書)

「経済学を学ぶのは、経済学者にだまされないためである」というのがほんとうかどうかはさておき、書店に並ぶ経済学者あるいはエコノミストの本のうち、はたしてどれが正しくて、どれがあやしいのか、という判断は難しい。 ただ、リアルタイムではわからなく…

コンラッド『闇の奥』(黒原敏行訳,光文社古典新訳文庫)

アフリカの奥地で見た「真実」とは。コンラッド『闇の奥』。 船乗りマーロウは,川をさかのぼる蒸気船の船長になるべく,アフリカの奥地に赴いた。そこで耳にしたのは,「クルツ」という男の噂。マーロウは男に会おうとするが・・・。 今から100年以上も…

百田尚樹『殉愛』(幻冬舎)

今週のベストセラー 第1位 大川隆法 第2位 AKB 第3位 百田『日本コピペ紀』 「いい本が売れるのではなく、売れる本がいい本だ」ということではないにしても、出版社としても「売れる本で稼ぎ、その稼ぎで作りたい本を作る」というのは正直なところだろう…