山野辺太郎『いつか深い穴に落ちるまで』(河出書房新社)

 主人公・鈴木は山梨県のとある建設現場にいる。リニア実験線の横で、表向きは温泉を掘っているのだが、実は極秘プロジェクト・・・ブラジルまで深い深い穴を掘ってつなげようというもので、終戦後まもなく運輸省の官僚・山本が新橋の闇市で思いついた案ある。
 ポーランドのスパイ、北朝鮮の某VIPの秘書、楽しい日系移民や外国人技能実習生など、謎の人物が現れては消え、そうする中で、いよいよ70年越しの計画が完成する日がやってきた。地球の裏のまだ見ぬ広報係・ルイーザへのほのかな想いを秘めて、鈴木は穴に飛び込む。

 

 なんなんだろうなぁ。
 胃の中に手を突っ込んでグリグリひっかきまぜられたような、ちょっとした不協和音を混ぜながら淡々と進行するモダンジャズのような、計算されたこのねじれっぷり。
 結局一気に読んでしまった。

 

 来年も、おもしろい本との出会いがたくさんありますように。

いつか深い穴に落ちるまで

いつか深い穴に落ちるまで

 

 (こ)