山本太郎『感染症と文明』(岩波新書)

気が付けば250回! よく読みましたね~!!

---
さて。

せんせいと示し合わせたわけではないのだけれど,僕も感染症についての本を読んでいた。山本太郎感染症と文明』。

感染症と人類との関係を,「文明」とか「社会」といった切り口から論じた本である。著者はアフリカ,ハイチなどで感染症対策に従事してきた医師である。

中世ヨーロッパにおけるペストの大流行が,結果として封建的身分制度の崩壊につながり,強力な国家形成を促したのではないか,との論考は興味深い。また,1918年から1919年に大流行した新型インフルエンザ(スペイン風邪)はアフリカでも猛威を振るったが,これには,植民地時代にアフリカに持ち込まれた交通システムと,第1次世界大戦における軍隊及び労働者の移動が寄与していたという。

本書はいう。「感染症のない社会を作ろうとする努力は,努力すればするほど,破滅的な悲劇の幕開けを準備することになるのかもしれない。大惨事を保全しないためには,『共生』の考え方が必要になる。」(194頁)。この感染症との共生は,「心地よいとはいえない」妥協の産物として,模索されなくてはならないのかもしれない,と。

ところで本書の筆者,たまたま昨日夜のニュースにも出ていた。真摯な語り口は,本から受ける印象そのままであった。

感染症と文明――共生への道 (岩波新書)

感染症と文明――共生への道 (岩波新書)


(ひ)