中野耕太郎『シリーズ・アメリカ合衆国史3 20世紀アメリカの夢』(岩波新書)

スターリンソ連にいた時代,アメリカ合衆国はどうだったか。中野耕太郎『20世紀アメリカの夢』。

岩波新書「シリーズ・アメリカ合衆国史」の第3巻である。

本書が扱うのは20世紀初めから1970年代まで。格差や貧困といった新たな問題に直面したアメリカが,その後,巨大な福祉国家へと成長するとともに,他方で二つの世界大戦を経て,「帝国」へと変貌していく過程を描く。

20世紀アメリカの夢。それは,「アメリカ社会から貧困と不平等をなくし,世界の人々にも自由と豊かさを分け与えようという奮闘」(223頁)であった。ニューディールに象徴される社会的な福祉国家化により,この「夢」は達成し得るかにみえたが――。

本書は,1972年のウォーターゲート事件と,これによる政府への疑念,そして福祉国家=「大きな政府」との決別,経済的リバタリアンの台頭というところで幕を閉じる。この後,アメリカ合衆国はどこへ進むのか。「20世紀アメリカの夢」という本書のタイトルが,切なく,はかないものに思えてくる。

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中野耕太郎『シリーズ・アメリカ合衆国史3 20世紀アメリカの夢』


(ひ)