プルースト『失われた時を求めて 第一篇 スワン家のほうへ I・II』(高遠弘美訳・光文社古典新訳文庫)

最近フランス文学づいてきたので,いよいよこの大作にチャレンジ。プルースト失われた時を求めて』。

プルーストが半生をかけて執筆した大作であり,「20世紀最高の文学」とも称されている物語である。

複数の日本語訳が出ているが,読みやすさ・文体の美しさから高遠訳を選んだ。高遠訳はまだ刊行途中というのがネックではあるが,まあどこまで読めるかも分からないし。というわけで,まずは全7篇のうち,第一篇「スワン家のほうへ」。

・・・いやあ,これは想像以上に大変な作品だった。

「スワン家のほうへ」は更に第1部「コンブレー」,第2部「スワンの恋」,第3部「土地の名・名」からなるのだが,このうち冒頭の第1部「コンブレー」からして難関。語り手の「私」が,ひたすらまどろんでいるのである。それもずっとずっと。

物語はやがて幼年時代の回想へと入っていき,ある夜の想い出が語られるのだけれど,これがまた,長い。なお「紅茶とマドレーヌ」は116頁で登場(もっと早く出てくるかと思った・・・)。

第2部「スワンの恋」は,一転して,主人公がパリ上流社交界の寵児・スワンの話。タイトルにもあるように恋の話なのだが,楽しい恋バナは最初の方だけで,あとはずっとずっと嫉妬が続く。嫉妬もここまでくれば文学になる。

第3部「土地の名・名」は,土地の名前についての話がずっと続いた後,10代の頃の「私」の恋の話になる。スワンの恋とはどこか対照的な,それでいて類似的な。

とにもかくにも文章が濃密。ななめ読みなんておよそすることができないくらい,濃密。主人公の様々な思考・思想が次々と示される。小説の形をとったエッセイ,いやエッセイの形をとった小説と理解した方が良いのかもしれない。しかもストーリー自体はほとんど進まないので,途中で投げ出す人がいるというのもよく分かる。

とはいえ不思議な魔力を持つ小説である。結局,相当な日数を重ねながらも,第一篇「スワン家のほうへ」を何とか読み終えることができた。ここまでで既に1000頁超。体感的にはその数倍はあった感じすらする。

巻末の解説がありがたい。次の第二篇は,いつ読もうか・・・。

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プルースト失われた時を求めて 第一篇 スワン家のほうへ I・II』



(ひ)