江口圭一『十五年戦争小史』(ちくま学芸文庫)

 先々週の続き。

 ヴィオリスのルポに満足しつつ、そういえば、ちゃんとした通史を読んだことがなかったことに気づく。
 それならばこれを、と勧められたのが本書であった。初版発行は1986年。昨年文庫化されて復刊。

 冒頭、「十五年戦争」の定義から始まる。1931年9月18日の柳条湖事件から1945年9月2日の降伏文書調印までの実質13年11ヶ月の一連の戦争を「十五年戦争」と呼ぶのはなぜか。局地戦の満州事変、日中全面戦争、世界大戦の三者を一連のものとして理解するのか、それぞれ別のプロセスとみるのか(とくに満州事変と日中戦争の関係)。本書は第1段階の満州事変(さらに前半の満州事変と後半の華北分離工作に分ける)、第2段階の日中戦争、第3段階のアジア太平洋戦争、を一連の過程として理解し、全24章に分けて、淡々と歴史的事実が並べられる。

 個人的には第2部「華北分離工作」がとても勉強になった。この時期は、満州事変は1933年5月の塘沽停戦協定で一段落し、1937年7月の盧溝橋事件までは、日本国内の情勢あるいは対欧米外交の動きが目立つためか、この間中国大陸で何が起きていたかは、意外と自分の中で抜けていたことを自覚。

 来年から高校に「歴史総合」という科目が生まれ、必修となる。近現代史を日本史と世界史を融合させる形で学ぶというものだが、教科書を見る限り、内容は世界史7:日本史3という感じだろうか。ただし、世界史ベースで学習を進めた場合、「十五年戦争の通史」という視点は薄まる。これがこの国の歴史を学ぶ上で、吉と出るか凶と出るか。

 なお、来年から使われる歴史総合の教科書では「満洲」という表記が採用されている。今後注意されたし。

(こ)