西條奈加『心淋し川』が直木賞に輝きました! おめでとうございます!
また,町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』が本屋大賞ノミネート入り! さらに当ブログで紹介した本の中では,伊坂幸太郎『逆ソクラテス』もノミネート入り! 大賞発表は4月14日とのこと。さてどうなるか・・。
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さて。
宇佐美りん『推し、燃ゆ』である。今週,芥川賞を獲得し,さらに本屋大賞にもノミネートされた。これは読まざるを得ない。
女子高生の「わたし」は,アイドルの大野真幸を「推し」ている。そんなある日,真幸がファンを殴ったというニュースが流れてきて・・。
まあとんでもない小説である。これまで刹那的な生き方をする主人公というのは純文学の世界には山ほどいたが,女子高生にその役をあてがったのは数少ないのではないか。ましてや本作品の主人公は,明言はされていないものの,何らかのハンディを抱えているっぽい(外見からは分からない系の)。文学もついにここまで来たか,と思う。
描写はリアルである。どのシーンも胸に刺さる。「推し」の誕生日にケーキを食べるシーンは,いろいろな意味で「うっ」と来た。
本作品の文体にも言及しておきたい。ここ2,3年ほどの間に,日本語というものは大きく変化した。特にSNSの普及が大きい。本作品は,まさに「今」におけるSNS,ブログ,女子高生の話し言葉から「おっさん構文」(p89)までをいずれも的確に文字化する。それでいて地の文は,これまでの純文学の作法に則った,しっかりした文体である。
主人公にハンディを抱えさせた点も含めて好き嫌いははっきりと分かれそうだが,でもこれだけ支持を集めているのは確か。おもしろい才能を持つ人が出てきた。
- 作者:宇佐見りん
- 発売日: 2020/09/10
- メディア: 単行本
(ひ)