裁判官を主人公にしたミステリということで読んでみた。直島 翔『テミスの不確かな法廷』。
任官７年目の裁判官・安堂（あんどう）。本州の最も西にあるＹ地裁に赴任した彼は、幼少時に発達障害と診断されていて――。
生きづらさを抱える若手裁判官という、なかなか稀有なキャラクターを主人公に据えた本作。派手なアクションもきらびやかな推理もなく、むしろ静謐な空気の中で物語は進む。ミステリ要素もあるにはある（というか、一応ミステリである）が、それよりは主人公の内面描写に心惹かれる。
ちょっとだけ残念なのは法律面。細かいところでツッコミどころが多い。ちゃんとした法律監修を通せば、もっと読み応えのあるリーガルミステリになるのに・・・などというのは余計なお世話か。
（ひ）
