ジェイミー・フィオーレ・ヒギンズ(多賀谷正子訳)『ゴールドマン・サックスに洗脳された私 金と差別のウォール街』(光文社)

胸くそが悪くなりながら、一気に読んでしまった、ゴールドマンサックスの元マネージングディレクターによる、要するに、金のことしか頭にない白人男性が支配する、女性差別と人種差別だらけでパワハラセクハラまみれのゴールドマンサックスでの18年間の勤務経験を振り返った本。

ただのセクハラパワハラおやじではなく、生き馬の目を抜く金融の世界で成り上がっていく連中によるセクハラパワハラだから、タチが悪いというか、なんというか。
そのセクハラパワハラ連中が、接待でぐでんぐでんになりながら絆を深めて巨額のビジネスを成功させていくというのは、まぁそんなものかなと思いつつ、そんな中で女性である著者も死に物狂いで昇進していく。

日本でも〇通とか〇〇商事とかこういう企業風土だというけれど、スケールが違うというか、「強欲」という形容がここまでぴったりの人たちの集団って、なかなかないなぁ、と思いつつ、ここまで振り切った集団だから、世界を振り回せるんだろうとも思った。

 

・・・とまぁ、そういうのからまったく縁遠い世界で暮らす人間にとっての、ちょっとした人間観察と社会見学の時間でした。

 

なお、2001年のところでは、同時多発テロ事件のようすが、当事者による記録として書かれている。また、本書で扱われている時期は#MeToo運動が始まる前のことなので、今ではいくらかの変化はあるのかもしれない。

原題は「Bully Market -- My Story of Money and Misogyny at Goldman Sachs」。はっきりとミソジニーと書かれている方が、著者の狙いはわかりやすい。

(こ)