小島俊一『2028年街から書店が消える日』(プレジデント社)

 2028年というのは、学校での電子教科書の導入が本格化する予定の年である。学校や図書館との取引が生命線となっている街の書店にとって、残された時間は短い。
 出版社、取次、書店、それぞれに問題があって、法令あるいは商慣行が問題を固定化し、解決困難な構造を生み出している。そこへトラックの2024年問題が拍車をかけた。

 そんな中、多くの書店関係者が「ゆでガエル」となって緩慢な死を迎えようとしている中にあって、立ち上がって発言し行動する、28人の関係者へのインタビュー集である。地方の個性的な書店の店主、匿名の関係者、直木賞作家、配送業者、コンサル、などなど。本が大好きな人たちによる、この国に紙の本と書店を残すための行動の記録であり提言である。
 そしてこれをまとめた著者自身が、トーハンから四国の書店に出向して業績を回復させた経歴を持つ、そうしたうちの1人である。

 驚いたのは、関係者の口から次々と明らかにされる、本を取り巻く業界のおそろしいまでの旧態依然とした商慣行である。
 Amazonは、顧客の嗜好を解析して購買をプッシュし、クリック1つで翌日に本が手元に届く。書店に顧客データがなく、コンビニへの雑誌流通のトラックに載せて本を配送するから納品に時間がかかる。これではアマゾンに勝てるわけがない。

 インタビューを受けた28人の中に、京都の大垣書店の社長とふたば書店の代表が登場する。京都でも書店の閉店は相次いでいるが、そうした中で京都発の反転攻勢の動きは着実にあると信じたい。(一乗寺恵文社さんは出てこなかった。有名すぎるからかな)

 書店といい、百貨店といい、パイはどんどん小さくなっていく中、なかなか変革に手が付けられないでいる。一方で、書店も百貨店も文化であり、残すべきものを残しつつ変わっていかなければ、未来はない。ただしその「残すべきもの」の見極めが難しい、大変に難しい。
 学校もそうだ。そうなんだけど。

(こ)