阿部拓児『アケメネス朝ペルシア』(中公新書)

古代ギリシアの歴史は、アケメネス朝ペルシアとの外交ないし戦争の歴史でもあった。そこで今度はペルシア側の歴史を知りたいと思い、読んでみた。阿部拓児『アケメネス朝ペルシア』。

副題に「史上初の世界帝国」とあるように、アジア・アフリカ・ヨーロッパにまたがった最初の帝国・アケメネス朝ペルシア。本書はその約220年にわたる歴史につき、9人の王の事績を軸に著したものである。

古い時代のことゆえ、その歴史を紐解くのは容易ではない。本書はこれを、残された「史料」を中心にたどっていく。

アケメネス朝ペルシア史研究に用いられる史料は、歴代の王それぞれが直々に作成した「碑文」、そして同時代のギリシア人であるヘロドトス、クテシアス、クセノポンらが残した叙述である。ユダヤ人がヘブライ語で記した旧約聖書も、重要な文献史料となり得る。っていうかすごいな旧約聖書

どのような史料があり、それには何が書かれており、そこからどのようなことが推測できるか――。本書は単にアケメネス朝ペルシアの通史だけではなく、「史料からどのように歴史を読み解くか」という歴史学一般のすぐれた教科書でもあった。


(ひ)