これまでありそうでなかった、ドリフターズの本格評伝である。笹山敬輔『ドリフターズとその時代』。
一時代を築いた国民的グループともいえるドリフターズの黎明期から志村けんの死去までを、多くの史料を引用しながら描き出した力作である。
ドリフのルーツをたどると、進駐軍のクラブに行きつく。本書はこのグループの歴史を丹念に紐解き、時にはそれぞれのメンバーの戦争体験にもさかのぼりながら、この音楽バンドでありながらコントグループという稀有な集団の姿を描写していく。
本書の後半では、ドリフを語る上で外せない2人の中心メンバー、いかりや長介と志村けんにスポットライトが当てられる。完璧主義者のいかりや長介。その弟子であり、ライバルであった志村けん。2人の愛憎入り混じった関係は、いかりやの死という形で終わりを迎える。
最後まで読ませた、力のある評伝であった。
(ひ)