2025-05-01から1ヶ月間の記事一覧

生井英考『アメリカのいちばん長い戦争』(集英社新書)

書名は伏せるが、先日読んだ本が今一つだった。著者の経歴・テーマ・出版社などに照らし、出版前からかなり期待していたのだが…。まぁこういう事もあるよね。 一方、こちらの本はあまり深く考えずに店頭でぱっと見ただけで買ったのだけれど、思っていた以上…

安藤寿康『教育は遺伝に勝てるか?』(朝日新書)

「生まれか育ちか」というのは教育における永遠の課題で、それを解くための研究方法として、古くから双子研究がある。アメリカでは一卵性双生児が養子に出されることがあって、そのふたりを追跡調査するんだそうだが、日本ではそこまでのことはできない。そ…

レジー『東大生はなぜコンサルを目指すのか』(集英社新書)

最近、うちの職場(職種)がちょっとヤバい。就活市場における志望者が激減しているのである。リクルート活動をしても競り負ける。・・・この国の将来、大丈夫か? これに対し、盛況なのがコンサル(コンサルティングファーム)である。東大生の就職人気企業…

中野慧『文化系のための野球入門』(光文社新書)

「野球部はクソ」を解剖するというサブタイトルにひっかかって、ついつい手にしてしまった。あとがきにあるのだが、このサブタイトルは編集者が勝手につけたもので、はっきり言ってしまえば、内容とはかなりかけ離れている。やられた。 本書は、きわめてまっ…

『萩原朔太郎詩集』(河上徹太郎編・新潮文庫)

先日リリースされたヨルシカの新曲『火星人』。「ぴんと立てた尻尾のさきから糸のやうなみかづきがかすんでゐる」というフレーズが、形を変えながら何度も出てくる。萩原朔太郎の詩「猫」からの引用である。 そういえば、2021年の曲『月に吠える』も萩原…

河野龍太郎『日本経済の死角』(ちくま新書)

日本経済の「失われた30年」については、いろんな人がいろんな説明をしている。明らかなことは、この30年で日本が急激に貧しくなったということだ。 それはなぜか。 これを読んだ次の日、さっそく高校生相手の授業で話をした。 以下は、その内容である。 =…

トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシーについて』(岩永健吉郎訳・中公クラシックス)

バーク『フランス革命についての省察』を読み終えたら、次に読むのはやはりこれだろう。トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシーについて』。 1831年。若きフランス人のアレクシ・ド・トクヴィルはアメリカ合衆国に派遣される。そこで彼が見た「デモク…

小西公大『ヘタレ人類学者、沙漠をゆく』(大和書房)

20代のころは、バックパックを背負って、往復の航空券だけを持って旅に出ていた。改革開放が始まったばかりの上海で、国連暫定統治下のカンボジアで、つかの間の和平のイスラエルで、焦土と化す前のシリアで、ジブラルタル海峡にのぼる初日の出を見ながら・…

エドマンド・バーク『フランス革命についての省察』(二木麻里訳・光文社古典新訳文庫)

フランス革命について論じた本が、立憲君主論の屈指の古典となり、また後の保守主義に多大な影響を与えた。エドマンド・バーク『フランス革命についての省察』。 そのうち読もう読もうとは思っていたが、なかなか手が出なかったところ、今読まないとやがて店…

本田由紀編著『「東大卒」の研究』(ちくま新書)

東大卒業生とはどういう人たちなのか。開成卒のI氏がテレビ局と組んで見事に「東大王」というブランドを確立させたことで、東大に対するイメージはずいぶんと変わったように思うのだが、ともあれ、そのあたりを東京大学の学部卒業生およそ1800人(男性1448人…