アンドレ・ヴィオリスはフランスの女性ジャーナリスト。第1次世界大戦の最前線からルポを発信し、アフガニスタンや仏領インドシナにも足を運んだ。パリ講和会議を取材し、ロイド・ジョージ英首相の独占インタビューにも成功している。
彼女は上海滞在中に第1次上海事変に巻き込まれ、そのまま日本へと渡る。3ヶ月の滞在の間に、政府要人やビジネスマンをはじめ、多くの日本人と接し、犬養首相の葬儀にも取材に訪れている。
ヴィオリスの経験豊富な筆が、満洲事変以降の熱狂にうかされている日本人を冷ややかに描く。貧しい労働者や疲弊した農村、暴利をむさぼる財閥、利権に目がくらむ政治家、傲慢な軍部。かつて文学者を志した彼女はふとした日常の光景を切り取りながら、さらっと当事者の肉声を載せ、そしてばっさりと斬る。彼女の目には、日本は孤立と破滅の道へと進んでいくように映る。
当時のフランス左派知識人の目には、日本人はこう見えていたのだ。とにかく、おもしろい。
本文21章218ページ。さらに充実の解説58ページと訳注が55ページ。2冊分の内容がある。