伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』(朝日新聞出版)

YOASOBIと島本理生辻村深月宮部みゆき森絵都とのコラボ企画が始動!
4名の作家が「はじめて〇〇したときに読む物語」をテーマに小説を書き下ろし,YOASOBIがこれを楽曲にするという。
これは読みたい。ぜひ読みたい。なんなら単行本の発売日に買って読みたい。

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さて。

プルーストを読み続けている間は他の小説に手が出せなかったが,ひとまず「花咲く乙女たちのかげに」まで読み終えたので,久々に現代小説にチャレンジ。読みたい本はいろいろあるのだけれど,やはりこちらにした。伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』。

ちょっとだけ不思議な能力を持つ中学教師・壇千郷(ちさと)。ある日,クラスの女子生徒から「自作の小説を読んでほしい」と言われ――。

これまでの伊坂幸太郎作品のおもしろいところをギュッと詰め込んだような作品である。軽妙な会話。キャラ立ちしている登場人物。ところどころに仕掛けられた伏線。主人公はいつしか「犯罪」に巻き込まれる。

軽めの文体でありながら,取り扱われているテーマ自体は,決して軽いものではない。むしろ本作は,犯罪被害者の想いを縦軸に,ニーチェの思想を横軸に据えた,重厚でチャレンジングな作品でもある。

それにしても伊坂幸太郎は,本当に読者思いの作家である。こうやったら読者は面白がってくれるだろう,とか,こうやったらハラハラしてくれるだろう,というのを常に考えながら作品を書いている感じがする。

ところで,他の作品のキャラクター,今回は出ないのかな~と思っていたら,かなり終わりの方で緑のアイツがワンシーンだけカメオ出演。おぉ,久しぶり~。

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伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』

 


(ひ)