逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)

新人離れした新人の大作。逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』。

1942年,冬。ロシア・イワノフスカヤ村の少女セラフィマは,母とともに狩りに出ていたが――。

独ソ戦における女性狙撃手を主人公に据えた,骨太の物語である。当ブログでも紹介したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』の世界。これが小説となって繰り広げられる。

女性でありながら戦場に放り込まれた主人公。その極限状態の中における怒り,悲しみ,逡巡。なぜ戦うのか,そしてなぜ敵を撃つのか――。

驚くべきなのは,この小説としての完成度の高さである。これがデビュー作とはとても思えない。戦場のリアルさ。物語を通して伝えられる強固なメッセージ。それでいてエンタメ性も失われておらず,むしろ終盤の展開は,小説というものの持つパワーというものを改めて感じさせられた。

とにかく,年末によい作品に出会うことができた。
来年は,どんな作品に出会うことができるだろうか。

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逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』


(ひ)