ユゴー『死刑囚最後の日』(小倉孝誠訳・光文社古典新訳文庫)

朝起きたら,直木賞候補作発表のニュースをやっていた。

・逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」(早川書房
・彩瀬まる「新しい星」(文藝春秋
・今村翔吾「塞王の楯」(集英社
柚月裕子「ミカエルの鼓動」(文藝春秋
米澤穂信「黒牢城」(KADOKAWA)

なんだこれは(笑)。近年まれにみるハイレベルなラインナップではないか。
しかも,初ノミネートは逢坂冬馬さんだけなのだが,その候補作「同志少女よ、敵を撃て」は実はデビュー作!
しかもしかも,ちょうど僕が今読んでいる作品・・・!
ちょっとびっくりした(笑)。

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さて。

バルザックの次はユゴー。といっても『レ・ミゼラブル』はさすがに長い(縮約版でも長い)ので,こちらにした。『死刑囚最後の日』。

死刑囚の書いた手記,という体裁を取った物語である。

とにかくリアル。圧倒的にリアル。全く予備知識なしに読んだ場合,物語だということに気づかずに最後まで読み終えてしまうかもしれない。

死刑囚の苦悩,揺れ動く心,そして迫りくる「死」の恐怖――。読者は本書を通じて,死刑囚の絶望的な日々をリアルに体感する。

なお,本書には「ある悲劇をめぐる喜劇」という作品も収録。これは,上流階級に属する人たちがそれぞれの立場から『死刑囚最後の日』という作品を批判する,という小作品である(メタ小説っぽい)。訳者あとがきによると,どうやら初の邦訳らしい。ちょっと得した気分になる。

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ユゴー『死刑囚最後の日』


(ひ)