澤田瞳子『星落ちて、なお』(文藝春秋)

直木賞の発表が近づいてきた。ということで,最有力候補作を読むことに。澤田瞳子『星落ちて、なお』。

河鍋暁斎の娘・とよ。天才絵師である父の下で,幼いころから絵の手ほどきを受けていたが・・・。

河鍋暁翠(河鍋とよ)の半生を描いた力作である。父に対する葛藤。そして同じく絵の道に進んだ兄との確執。時代が明治,大正へと進む中で,自らのよりどころとする「狩野派」がもはや時代遅れとされることへの想い・・・。

芸術に生きることのすさまじさを描き切るとともに,親子,きょうだい,夫婦とは何かということをも問いかける。

若冲』も良かった。『火定』も良かった。でも,本作は,澤田瞳子のこれまでの作品の中で,一番良かった。

まさに直球勝負の作品。直木賞に届け!


(ひ)