東京の片隅で、弁護士の遺体が発見された。殺人と死体遺棄の罪で、ある男が逮捕された。犯行を認め、自供にも矛盾はない。犯人しか知らない「秘密の暴露」もある。しかも彼は、30年前の愛知県での殺人事件についても、自分が真犯人だと言い出した。
殺人犯の家族となった男、突然父を殺された女。しかし、男にも女にも、1つだけ、どうしても腑に落ちない点があった。「父がそんなことをするはずがない。」
「あたしも、あなたのお父さんは嘘をついていると思います。うちの父は、あんな人間ではありません。」
ここから事件は大きく違った展開を見せる・・・。
久しぶりに東野圭吾を読んだ。意外性というよりも、安心して読めた。さすがである。ただ、大どんでん返しに「ふふ、やっと来たね」とにやにやしてしまう時点で、ミステリー作品としてはちょっぴり不幸なことなのではあるまいか。
ちなみに、1刷の帯は白、2刷の帯は黒だったようだ。少しだけ迷った末に、白を手にした。
帯によれば、本書は『白夜行』と『手紙』と並ぶ最高傑作なのだという。なるほど、絶望と孤独の中で白鳥とコウモリが飛び交うさまは『白夜行』を彷彿させ、贖罪というもうひとつのテーマからいえば『手紙』に行き着く。
本書が最高傑作なのかはさておき、あらためて『白夜行』と『手紙』の存在の大きさを思い知ることにもなった。
(こ)